水俣病、強制不妊…大型訴訟「正常化」いつ? 熊本地裁、審理足踏み

西日本新聞 熊本版 綾部 庸介

「他の地裁は開廷しているのに」

 新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言は解除されたが、熊本地裁は、多くの傍聴者が見込まれる水俣病旧優生保護法関連の訴訟について、弁論期日を取り消したり非公開の協議に変更したりしている。新型コロナウイルスの感染防止が理由だが、同種の訴訟で通常通り審理を再開した地裁もある。高齢者の多い原告側からは「感染防止策をとった上で、通常通り審理してほしい」と迅速化を求める声が上がる。

 「つい1カ月前に亡くなった原告もいる。早い判決を」。水俣病被害者救済法に基づく救済対象外になったのは不当などとして集団訴訟を起こしている被害者団体「水俣病不知火患者会」の原告ら二十数人は25日朝、地裁前で通勤する職員らに早期再開を訴えた。

 弁護団によると、2013年提訴の同訴訟は、原告の平均年齢72歳。長期化を避けるため昨年10月、原告178人を対象に22年3月までに判決を出すことで地裁と合意した。

 しかし今年3月以降、感染拡大防止を理由に計3回、口頭弁論期日が取り消された。7月17日も予定しているが、実施は不透明という。患者会の元島市朗事務局長は「取り消しが続けば(判決時期の)合意も危ぶまれる。コロナの恐ろしさは理解できるが、裁判は進めて」と語る。

 緊急事態宣言が熊本県内にも拡大された翌日の4月17日、熊本地裁は5月6日までの期日取り消しを決めた。宣言解除後に刑事・民事ともに審理を再開したが、感染防止策として傍聴席の利用を最大3割程度に制限。最も広い法廷の傍聴席は72席だが、十数席しか使わない場合もある。

 一方、旧優生保護法下で不妊手術を受けさせられたのは違憲として男女2人が国に損害賠償を求めている訴訟は、3月中旬に口頭弁論が取り消され、今月3日の口頭弁論は非公開の弁論準備手続きになった。地裁側から「傍聴用の車椅子席を1、2席しか用意できない」と言われ、弁護側が変更を打診したという。

 弁護団の東俊裕弁護団長は「傍聴の行列ができれば感染防止にならない。ただ延期すると裁判が進まないから」と説明。原告の渡辺数美さん(75)は「非公開で(主張を)世に伝えられないのは残念」と話す。

 強制不妊問題の関連訴訟は、札幌地裁では19日、傍聴席の利用を制限した上で口頭弁論を実施。東京地裁では30日に判決が出る予定。水俣病の集団訴訟も、大阪地裁では7月1日に証人尋問の予定だ。この日、熊本地裁前で審理再開を訴えた原告側には「感染者が出ている地域でも裁判が開かれているのに、なぜ熊本ではできないのか」という不満がある。

 熊本地裁は「全国の裁判所で統一した感染防止の基準はなく、期日の延期・取り消しや傍聴席制限などは、それぞれの地裁や裁判官に委ねられている」と説明している。

 (綾部庸介)

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