「若い女」 向こう見ずで自由奔放なパリジェンヌのリアルな生活感

西日本新聞 吉田 昭一郎

配給会社お薦めの一作~オンラインで見る「Help! The プロジェクト」

 独立系の映画配給会社がコロナ対策で結集し、それぞれ権利を持つ旧作を会社別に「見放題」パックにまとめて有料でインターネット配信する「Help! The 映画配給会社プロジェクト」。配信13社の方々に自社パックから推薦作を選んでもらい、見どころを紹介していただいています。

 「若い女」(レオノール・セライユ監督=2017年、フランス、97分)

 ★サンリス映画部の川村真砂美さんから

 【作品】

 卒業制作の脚本をもとにした本作が、カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞する快挙を成し遂げたフランスの若手女性監督、レオノール・セライユの鮮烈なデビュー作です。「卒業制作の~」ということもあってか、いい意味で洗練されていないからこそ、パリの女性のリアルな生活感を映し出していて、すっと自然に見ることができる映画なのではないかなと思います。

 主人公のポーラはわがまままな女性ですが、自己主張がはっきりしている。純粋で自分を飾らず、自由に生きる。現代日本の多くの女性には何かを感じ、考えてもらえるキャラ。そして、ポーラを造形する監督こそが“若い女”そのものであるのかもしれない。

 ポーラの向こう見ずで不器用なところはきっと誰もが以前はそうだったかもしれず、もしかして今現在もそうかもしれず、年齢を重ねても「自分探し」は終わらない。“若い女”はどこにでもいる私たちなのだな、と感じてもらえるかもしれません。

 劇場公開から2年近くが過ぎましたが、何度も見る中でその時点の自分を照らし合わせて見ても面白い、育てがいのある作品だと思っています。

 見逃してしまった方がたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひこの機会に見ていただきたいです。

 【サンリス】

 映画配給を始めて約5年の会社です。これまで配給した作品で話題となったのは、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したハンガリー映画「心と体と」(イルディコー・エニェディ監督)でしょうか。伝説的デビュー作「私の20世紀」(1989年、カンヌ国際映画祭カメラドール受賞)も4Kレストア版として公開しました。

 作品を選ぶ際に気に懸けているのは、作品を通じて製作された国やその文化が見えてきて、新たな世界観を得るきっかけになるような作品を見つけたい、ということ。また、新たな発見や気づき、記憶のよみがえりにつながる何かが隠れているような作品に巡り合いたいと思っています。

 【私の映画愛】

 劇場で、1人で見ても誰かと見ても、どこで見ても楽しめる映画は身近なエンターテインメント。今はネット配信作品も増えて、選択肢が増えました。

 イベント上映があるとどうにかして見に行こうと思う作品の一つは、清朝最後の皇帝で後の満州国皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯を描いた「ラストエンペラー」。壮大な世界観はすばらしく、この映画は劇場で何度でも楽しみたい。

 「ナイト ミュージアム」や「ウェイトレス おいしい人生のつくりかた」「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」のような、ファンタジーやハートウォーミング、コメディーも好きで、見た後、映画の舞台に関係する場所に出かけたくなります。

 派手な作品をわいわい楽しんだり、味のある作品を一人でじっくりと見たり。同じ作品でもその時々の気持ちや自分が置かれた状況によって理解が変わったり、数を重ねて見るたびに新しい発見があったりする。ある作品をきっかけに気に留めていなかったジャンルに興味がわく。そんな映画の世界は素晴らしいものです。

「若い女」より©2017 Blue Monday Productions

 

 ★鑑賞記者の感想

 主人公のポーラは自由奔放でだらしがなく、いいかげんで、うそもつく。人々から拒絶された孤独なパリジェンヌ、31歳。男性から見ると、全く好ましい女性ではない。

 10年付き合った恋人の写真家に別れを告げられて、泣き叫んでは荒れ放題だ。恋人の愛猫を抱いたまま、放浪生活が始まる。頼った友人宅の怒りを買って追い出され、実家の母親は過去に何があったのか同居を拒む。小学校の同級生と勘違いした女性宅に居候するが、うそがばれて、またたたき出される。

 ベビーシッターとして働くが、「大学生」と身分詐称したのがばれ、仕事もいいかげんで契約破棄のピンチ。下着店の店員のバイトは何とかこなすが、自身の妊娠が分かって…。何なんだろうか。花のパリが荒涼たる荒れ地に見える。

 「傷だらけの○○」とか、「フーテンの○」とか、ポーラに冠してみたくなったが、それなりの生き方の美学は見当たらない。動物的であり、本能的であり、はちゃめちゃ。ただ、どこかに優しさがあって憎めない。

 女性に響くところがあるのだろうか。誰だって情けないところがある。女子会の盛り上がりのように「あんなこと、あるある」と笑えるのだろうか。生きづらい世情にあって、何があっても立ち向かい、どうにか乗り越えるポーラのバイタリティーに励まされるところがあるのだろうか。

 よく分からない。よく分からないという意味で強く印象に残った。一呼吸置いて、よく分からないのは、自由な表現に挑む「21世紀のヌーベルバーグ」についていけない昭和世代の頭の固さからだろうか、と考えてはみたのだが…。(吉田昭一郎)

 ◆サンリス見放題配信パック(「若い女」など6作品)3カ月700円(税込み)/寄付込み6カ月1700円/同6カ月2700円。8月31日まで販売する。

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