少子化の加速 克服に地方移住の促進も

西日本新聞 オピニオン面

 少子化と人口減少が加速している。このままでは国の将来が立ちゆかない。政府も危機感を強めてはいるが、対策の見直しや拡充はまだまだ不十分だ。

 厚生労働省が2019年の人口動態統計をまとめた。女性が生涯に産む子の数(合計特殊出生率)は4年連続で低下し、1・36にとどまった。出生数は86万5千人で、1899年の統計開始以来初めて90万人を割り込んだ。死亡数は138万1千人と戦後最多に達し、人口の自然減は51万6千人に膨らんだ。

 政府は5月に決定した第4次少子化社会対策大綱(5年めどに見直し)で、出生数の減少を「86万ショックとも呼ぶべき状況」と記述した。89年に出生率が戦後初めて1・6を割り込んだ「1・57ショック」の記憶を呼び覚ます表現だ。

 新大綱はその上で「希望出生率1・8」の実現を基本目標に掲げている。この数字は若い世代が希望通りに子どもを持てた場合に見込まれる出生率で、大綱に明記したのは初めてだ。

 ただ、列記した対策は保育の受け皿整備、多子世帯の支援拡充、男性の育児・家事参加の促進、長時間労働の是正など、既婚の子育て世代向けが中心だ。いずれも重要だが、従来の施策を延長した印象が強く、効果を疑問視する声もある。出生数などは一向に好転せず、状況はむしろ悪化傾向にあるためだ。

 少子化の主要因は未婚化や晩婚化にある。昨年の婚姻件数は59万9千組で前年よりやや増えたものの、1972年のピーク時(110万組)から半減している。格差の固定化や非正規雇用の広がりで経済的な不安を抱え、結婚をためらう人は相当数に上るとみられている。

 それを踏まえると、非正規から正社員への転換、同一労働同一賃金の徹底など、雇用環境面の支援により重点を置く必要がある。新型コロナウイルス感染拡大はくしくも若者の雇用不安や生活苦をあぶり出した。

 もう一つ、提起したいのは地方移住の促進だ。自然や食に恵まれ、生活にストレスが少ない地域は出生率が高い。九州7県は1・73~1・44と全国平均を上回り、宮崎、長崎、佐賀、鹿児島、熊本の5県が全国上位10県の中に名を連ねている。

 大都市の人口過密が感染症の拡大を招く弊害も顕在化した。在宅勤務などテレワークの広がりに伴い、地方に関心を持つ若者は増えている。九州をはじめ列島各地への移住が進めば、地方創生にもつながろう。

 無論、子どもを持つかどうかは個人の自由だ。そこには十分配慮しつつ、少子化克服への視点と対策の幅を広げ、活路を見いだしていきたい。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ