長崎県諫早市に暮らした芥川賞作家、野呂邦暢が亡くなり40年…

西日本新聞 社会面 山本 敦文

 長崎県諫早市に暮らした芥川賞作家、野呂邦暢(くにのぶ)が亡くなり40年。命日に合わせ毎年5月に開かれる「菖蒲(しょうぶ)忌」はコロナ禍で中止になったが、地元の顕彰委員会が著書「落城記」の朗読CDを製作した。戦国時代、この地を支配した西郷家が滅ぼされるまでの数日を城主の娘の視点で描く。

 福岡県大牟田市で震災被災地のチャリティー朗読会を開く龍芳枝さん(75)が吹き込んだ。龍さんによると、野呂文学の魅力は「情景が浮かぶ表現の巧みさ」だ。帷子衣(かたびらぎぬ)の汗、干潟に浮かぶ月、燃えさかる矢倉の焔(ほのお)-。「土地の精霊の力を借りて書いた」と語った野呂の文章は今もみずみずしく、色あせない。だから読み継がれるのだろう。

 断定、嘲笑(ちょうしょう)、揶揄(やゆ)の言葉が飛び交う時代だ。「野呂文学に触れるきっかけになれば」とCDは諫早市内の学校や図書館に寄贈された。地に根差した良質の言霊が人の心を豊かにすると信じるからこそ。 (山本敦文)

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