LINEで質問対応、留学生も指導…ネット活用進むコロナ禍の学習支援

西日本新聞 くらし面 金沢 皓介

 生活困窮家庭の子どもなどを対象にした学習支援に取り組む福岡市の団体が、インターネットを活用した指導形態への転換を図っている。新型コロナウイルスの感染拡大で子どもを1カ所に集める従来の対面型の支援は当面難しいと判断。学習の遅れも不安視される中、オンラインの指導や会員制交流サイト(SNS)での質問受け付けを始めた。運営にはコロナ禍の影響を受ける大学生も加わっており、当事者目線で感染の第2波も念頭に置いた対策を進めている。

 団体は福岡市西区のNPO法人「いるか」。2014年から生活保護就学援助の受給世帯、シングルマザーの子どもなどを対象に無料学習教室「マナビバ」を開く。地域の公民館などで小学生から高校生までを指導。講師は大学生や現役の教師らが務める。

 19年度は約220人が登録。今年3月、高校受験を目前に控えた中学生の通う学校が休校となった際は、急きょオンライン環境を整えたパソコンを準備し、受験生の家庭に貸与。講師らが集まる拠点と結び、マンツーマンでオンライン指導を行った。「受験直前で子どものやる気もあり、極めて学習効果は高かった」と理事長の田口吾郎さん(42)は振り返る。

 4月に緊急事態宣言が出されると、講師陣も外出が自粛されるようになり、対面型はおろか、3月に取り組んだ手法も困難に。休校が長引くことで、せっかく身につきかけていた学びの習慣が損なわれることに不安を抱く保護者は多く、新たな対応が急がれていた。

 そこで「こちらが子どもに近づいていく仕組みを目指した」と田口さん。講師と各家庭を結ぶ一般的なオンライン指導とは異なり、子どもたちにパソコンを置いた近くの集合住宅集会所などに足を運んでもらう形を提案した。集会所へは家庭ごとに時間差で訪れるようにして密集を避ける工夫もした。福岡市内の拠点は6月中に7カ所に増え、学ぶ児童生徒数も約90人になるという。

 第2波が発生することも想定し、学びを止めないためのもう一つの試みが「Ask!!マナビバ」だ。パソコンはなくても各家庭に浸透するスマートフォン。その機能の一つ、無料通信アプリLINEに開設したアカウントに登録してもらい、子どもが質問したい問題の画像や内容を送ると、講師がリアルタイムで返信する仕組みを整える。

 指導の中心を担うのは、九州大工学部3年の小沢翼さん(22)。昨年9月、1年間の予定でシンガポールの大学に留学したが、コロナの影響で3月に急きょ帰国することになった。大学は秋まで休学する予定だったため時間に余裕もあり、指導役を買って出た。

 小沢さんは九大生による学習塾「九瑛舎」の運営を担ってきた。ひとり親家庭で育ち「普通の家庭というレールを外れても、人生を詰まないようにする制度設計が必要。社会が何もしてくれない怒りもあった。何か協力できることがあればやりたいと思っていた」と話す。

 質問は小中高の全教科に対応し、平日の午後5時から同8時まで受け付ける。小学6年女子は「460デシリットルの35%は何デシリットルか?」と質問を寄せた。聞いていくと、百分率をそもそも理解していないようだった。

 「校庭にいる100人のうち、50%がサッカーをしている。サッカーしている人は何人いる?」。身近な事例に置き換えて説明を重ねた。文字のやりとりが中心だけに理解させる難しさはある。やりとりを続けること1時間半。児童もようやく飲み込めたようだった。「妥協せずに納得できるまで続けないと理解は深まらない。オンライン指導を補助するものとして、どこまで丁寧にやりとりするかを模索している」と小沢さんは言う。

 新しい生活様式に合わせた学習支援は始まったばかりだ。オンラインに移行したことで思わぬ収穫もあった。これまで講師は地元の大学生が中心だったが、インターネット上で広く呼び掛けたところ、海外在住の日本人留学生らからも問い合わせがあり、担い手の幅が広がった。

 「オンラインだからこそ、私たちの活動に理解を示し、アクセスしやすくなった人たちがいる。助けたい人が助ける、本来の学習支援の理想像には一歩近づいたのではないか」。田口さんは力を込める。

 (金沢皓介)

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