悩み和らげる「聞き手」の思い 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

連載:吃音~きつおん~リアル(26)

 吃音(きつおん)リアル最終回です。これまで、吃音の人は、話すのに時間がかかり、変な沈黙の間が生じて誤解されることを伝えてきました。私が啓発を広げていると、吃音ではないけど、悩みが似ている人たちの悩みが聞こえてきました。

 場面緘黙(かんもく)という言葉をご存じでしょうか。家では普通に流暢(りゅうちょう)に話せるが、園や学校などでは話すことができなくなる不安症のことです。家族と話しているときは問題ないのですが、園や学校の先生から「Aちゃん、園ではしゃべっていないです」と報告があり、家族が気づくこともあります。

 約200人に1人の割合で存在しますが、「いいかげんにしゃべりなさい」と誤解され、さらに緘黙状態が悪化することがありますので、園や学校の先生に知ってもらいたい疾患です。スモールステップでできることを増やしていく支援が必要となります。

 また、コールセンターでの電話を受けるときに、元々吃音ではないのに、ある時期から最初の言葉が出ないことに悩んで、来院される人もいます。確かに、電話は精神的負荷がかかることが知られ、損害保険会社のセゾン自動車火災保険が今年5月、日本人の約4割が「電話恐怖症」であるというアンケート調査を発表しています。さらに、話すことのスペシャリストのアナウンサーですら、ある日を境に本番中に最初の言葉が数秒たたないと出なくなる吃音の難発と似た症状が出てきました。普段の会話ではまったく症状が出ないのだけど、本番で第一声が出ないため、相談に来られたケースもありました。

 最後に、声を出すことができて当然と思っている方が多いかもしれませんが、その当たり前の「話すこと」がうまくできない人もいます。しかし、「聞き手」がそんな人がいるのだ、という知識を持っているだけで、流暢に話せない人たちの悩みが軽減されると思います。この吃音リアルを通して、多様性のある社会の一側面が伝えられたとしたら幸いです。ありがとうございました。 (九州大病院医師)

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