災害公営住宅、平均68歳 朝倉の被災者が自治会結成 九州豪雨3年

西日本新聞

孤立防ぐ寄り合い模索

 2017年の九州豪雨で甚大な被害を受けた福岡県朝倉市に今春、新たな自治会が加わった。名前は「杷木団地」。豪雨で自宅を失った市民が暮らす災害公営住宅だ。コミュニティーはできたが、65歳以上の入居者が6割を超え、住民による活動はおぼつかない。東日本大震災などでは、災害公営住宅での孤独死が相次いで社会問題化しており、関係者からは「周囲が継続的に見守り、支えていくことが必要だ」との声が上がっている。

 「日中は外に出ても誰もおらん。ドアはピタッと閉まり、音すら聞こえない」。入居する高齢女性は、集合住宅の「鉄の扉」が隣近所の付き合いを阻む壁のように感じていた。

 ここで生活を始めて約1年。思い出すのは、以前住んでいた集落のことだ。「家族同然で気心も知れていた。寄り合いも多かったし、にぎやかだった」。慣れ親しんだ暮らしを豪雨に奪われ、この場所をついのすみかと決めた。「立派な家に住まわせてもらえてありがたい。けど、寂しい」

 災害公営住宅は、自宅の自力再建が困難な被災者のための賃貸物件。同市には杷木団地と柿添団地の計80戸が整備され、応急仮設住宅の入居期限を迎えた昨年7月以降、被災者が住み始めた。市によると、杷木団地には36世帯58人が入居し、平均年齢は68歳。1人暮らし世帯の割合は5割近くに上るという。

 被災者の孤立を防ぐため、見守り活動をする「市地域支え合いセンター」は昨秋から定期的に交流会を開催。新型コロナウイルスの影響で約3カ月間中断したが、今月から再開させた。

 「せっかく集まったから何かせなねぇ」。一人がストレッチ体操を提案すると、椅子に座りながらみんなで手を上げたり、足を上げたりし始めた。「嫁に蹴られるより痛てぇ」。男性が冗談を飛ばすと、どっと笑いが起こった。80代女性は「耳が遠いから、みんなの話はよく聞き取れないけど、笑顔が見られる。それだけで十分」とほほ笑んだ。

 同センターの主任生活支援相談員の品川史夫さん(62)は「つながりをつくることが大事だ」と語る。ただ7月5日以降は法律上、被災者以外の入居も可能になる。「一般の人たちが入ってきた時に打ち解けられるかどうか」と心配する。

 団地の永田茂光・区会長(62)は「(自治活動は)手探りの状態。ボランティアの助けを借りながらやっていくほかない」と継続的な支援を求める。

 被災者支援に取り組んできた福岡市のNPO法人「YNF」の江崎太郎代表理事(40)は「恒久的な住まいを確保できたら生活再建したとみなされ、支援は細りがちだ。しかし、周囲とのつながりなくして生活再建はありえない」と指摘。「コミュニティー運営という被災者の負担も考慮しながら、行政や地域による新たな支援の枠組みを考えてほしい」と訴える。 (横山太郎)

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 福岡、大分両県に大きな被害をもたらした九州豪雨は7月5日、発生から3年を迎える。復興に向けた取り組みを進める被災地を追った。

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