12歳の林芙美子を銅像に 少女期過ごした直方市で建立の動き

西日本新聞 筑豊版 安部 裕視

 福岡県直方市で少女時代を過ごしたとされる作家林芙美子(1903~51)の銅像建立に向け、市民有志が動きだした。19団体、約400人が加盟し、創立65周年を迎えた直方文化連盟(能間瀧次会長)が記念事業として取り組む。200万円を目標に建立資金を市民から募り、芙美子の没後70年の命日に当たる来年6月28日の除幕を目指している。

 芙美子は自伝的小説「放浪記」で「直方の炭坑町に住んでいた私の十二の時」と記し、「学校をやめて行商をするようになった」「一つ一銭のアンパンを売り歩く」と暮らしの貧しさを描く一方、「ぐいぐい向日葵(ひまわり)の花は延びて行った」の一節で始まる詩「いとしのカチューシャ」では「私は十二の少女」「洋々たる望を抱いて野菜箱の玉葱(たまねぎ)のようにくりくり大きくそだって行った」とつづる。

 28日に直方文連は、文学碑が立つ同市の須崎町公園で恒例の「林芙美子忌」を営んだ。前身の団体が始めて通算39回目となり、会員らがアンパンとラムネを供えた碑の前に白い菊を献花した。碑は同団体が放浪記の一節を記して81年に建立。直方文連は一口2千円で寄付を募り、碑に寄り添う形で像を建てる。

 供養の後、近くの圓徳寺で「多感な少女時代を直方で暮らしたことが芙美子の文学の原点であると言われていることを直方市民として誇りに思い、文学碑と芙美子像が直方の文化のシンボルとして根付いていくことを願う」などとする建立趣意書を確認し、活動のスタートを切った。

 制作には、JR直方駅前に立つ同市出身力士「大関魁皇像」の作者で彫刻家の片山博詞さん(56)が当たる。「芙美子忌」に参列した片山さんは「直方は芙美子にとって、多様な人が世の中にいることを知った大事な場所で、放浪記などでの描写も具体的で生き生きとしている。同じ表現者として作中の思いを読み解き、未来に視線を向けた思春期の女性の姿を等身大で表現したい」と述べた。

 魁皇像は「触れて鑑賞できる」をコンセプトとしており、能間会長は「芙美子像も見るだけでなく、触れて親しんでもらいたい」と話す。当時の身長を推測し、高さ120センチの立ち姿にする計画。芙美子像は既に女学校時代を過ごした広島県尾道市などにあり、母親の故郷とされる鹿児島市の桜島には文学碑とともに成人期と少女時代をかたどった像2体が立つ。

 須崎町公園は市有地で、市も建立に協力する。大塚進弘市長は「林芙美子が過ごした少女期と、コロナ禍にある今の生活には何か重なるものを感じる。どんな状況にあっても、芙美子は夢を持ち希望に向かって前に進んでいた。像が完成する頃には、社会経済も安定していることを期待している」などと言葉を寄せた。

(安部裕視)

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