英国の港町リバプールでビートルズファン向けの…

西日本新聞 オピニオン面

 英国の港町リバプールでビートルズファン向けのバスツアーに参加したことがある。リバプールはメンバー4人の出身地で、ゆかりの場所は数多い

▼人気スポットの一つが「ペニー・レイン」と呼ばれる小さな通り。故郷の風景と住民を明るく歌った同名の曲がある。ガイドが「あちらが歌詞に出てくる理髪店です」とアナウンスするとバスの座席から歓声が上がる

▼そのペニー・レインで今月、通りの名前を記した表示板が塗料で汚されるという事件が起きた。通りの名が18世紀の奴隷商人ジェームズ・ペニーに由来するとの説があり、それに反発した行為らしい

▼米国で黒人男性暴行死事件に端を発する人種差別反対運動が高まっているが、英国でもそれに呼応して植民地主義や奴隷制度に関わった人物の評価の見直しが議論されている。オックスフォード大学は19世紀の政治家、セシル・ローズの像の撤去を決めた

▼歴史上の人物の評価を現在の価値観で判断していいか。これは悩ましい問題だ。ただ「いちゃもんをつけるな」とかたくなになるのではなく、その人物の主要な功績が普遍的なヒューマニズムに照らして是か非か、そこを考えたい

▼その後の英国の報道によれば、当地の博物館が「通りの名前と奴隷商人を結びつける証拠はない」との見解を表明したという。とりあえず当面は、わだかまりなく曲を歌えそうだ。ファンとしては一安心である。

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