わずか5日で「スルー」 藤崎真二

西日本新聞 オピニオン面 藤崎 真二

 ドライブスルーといえばハンバーガーだったが、今やPCR検査が思い浮かぶ。

 新型コロナウイルスの感染は国内では落ち着きつつあるが、第2波に備え検査態勢の確保は必須だろう。海外に比べ検査数が極端に少なかった頃、車に乗ったまま診療、検体を採取するドライブスルー方式が世界に広がっていた。これを発案したのは韓国・仁川(インチョン)市の臨床医師。学会で発表したのが最初のようだ。

 韓国では2月中旬、感染者数が爆発的に増加した。PCR検査は迅速さと同時に、検査する医療関係者の安全も確保しなければならず、通常なら消毒などのため30分間隔を取る必要がある。これを両立するにはどうすれば、という発想が最初だったという。

 ヒントは、彼が2年前参加した生物テロ想定の訓練にあった。テロの現場は病院に限らない。例えば競技場かもしれない。対応には消防や警察などいろんな要員が関わる。そこから、広い場所で多くの人が役割分担して対応するアイデアが生まれたという。

 最初に導入した自治体はソウル郊外の高陽(コヤン)市だ。2月22日にあった災害対策本部会議で市長が「保健所は時間がかかり、感染の危険もある。広場などではできないのか」と提起。出席者の一人、韓国予防医学会の新型コロナ対策委員長がドライブスルー方式を紹介し、流れが決まった。

 導入の正式決定は24日。翌日には50台収容の公営駐車場を確保しテントやテーブルなどをレンタルで設置、最初の会議から5日目の26日には検査が始まった。検査と診療は、地元医師会員が1日4人ずつ交代で担当、車の誘導はボランティアが受け持った。費用は約140万円。非常時だからできた政策決定と実行だった、とメディアは伝えた。

 高陽の成功を受け、韓国政府はこれを国家標準型に指定、全国に設置を勧告した。

 現在は暑さに備え「ウインドースルー方式」だそうだ。医療陣はコンテナの中から窓に固定されたゴム手袋に手を通し、窓越しに検体を採取するとか。防護服やゴーグル、マスクなどを着用せずに済むことから、暑さによるスタッフの体力消耗を防ぎ、医療廃棄物の減少も狙うという。

 日本国内では、製薬会社や大学の新たな検査法の公表が相次ぐ。鹿児島大発ベンチャーが販売する唾液による検査キットは従来より安全で、最短20分で結果が出るという。

 優れた技術も活用しなければ意味がない。あとは政府と自治体のやる気の問題か。次はうまくやってほしい。5日目に始めて、とは言わないから。 (論説委員)

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