香港の自由、力で封殺 中国「安全法」成立で「50年維持」もほご

西日本新聞 総合面 川原田 健雄

抗議活動に危機感 本土波及恐れ

 【北京・川原田健雄】中国の習近平指導部は30日、香港への締め付けを強める「香港国家安全維持法」を異例のスピード審議で成立させた。社会の安定を優先し、共産党体制への批判や異論を力で封じる姿勢を改めて示した形だ。米英などの批判は承知の上で統制強化を進める背景には習指導部の焦りもにじむ。

 「中国はいかなる外国勢力による内政干渉にも断固反対する」。中国外務省の趙立堅副報道局長は30日の記者会見で、国家安全法成立に懸念を示す日本政府などの反応について、いつものせりふを繰り返した。

 中国は国際条約に相当する1984年の中英共同宣言で香港の「高度な自治権」を明記。香港の憲法に当たる基本法でも規定し、50年間変えないと言明した。

 中国政府が香港の治安維持に直接介入することを可能にする今回の国家安全法について米英は「国際約束違反だ」と批判を強める。しかし、習指導部は「(共同宣言は)中国側の一方的な宣言であり、英国への約束でも国際義務でもない」(外務省報道官)と意に介さない。

 批判を承知で法制定に踏み込んだのは、昨年以降、香港で続いた市民の抗議活動に危機感を抱いたためだ。中国当局が香港に武装警察を派遣すれば、民主化デモを武力弾圧した89年の天安門事件をほうふつさせ、国際社会の厳しい批判は避けられない。抗議活動の効果的な歯止め策を見いだせない中、統制強化の口実として目を付けたのが「外部勢力の干渉」だった。

 官製メディアなどは、香港の抗議活動の背景には米国が黒幕として存在し、資金を投じて活動を裏で操っているとの“陰謀論”を展開。「外部勢力の干渉によって国家の安全が脅かされている」として国家安全法の必要性を強調し、制定への流れをつくった。

 中国の歴代権力者は、天安門事件のように国内で不満や異論が噴出すれば力でねじ伏せてきた。習指導部も「テロ対策」を名目に、新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族を大量に拘束し、収容施設へ送り込んだ。

 ただ、強硬姿勢は不安の裏返しでもある。共産党一党支配が揺るがないよう批判勢力を徹底的に抑圧し、外国からの批判には猛反撃を展開する。香港への国家安全法制導入も、市民の抗議活動が拡大し続け、中国本土に波及することへの恐れが習指導部を後押ししたのは間違いない。

 国家安全法が施行されれば、中国本土と同様に政治的な活動や言論の自由が制限され、「反共産党」「香港独立」などの主張は罪に問われる可能性が高い。

 9月の香港立法会(議会)選挙を巡っては、国家安全法に賛成しなければ立候補が認められないとの見方が浮上。民主派が壊滅的な打撃を受ける可能性もささやかれる。

 民主派の間では手詰まり感がにじむが、民主活動家の周庭氏は30日、ツイッターでこう訴えた。「絶望の中にあっても強く生きなければならない。生きてさえいれば、希望がある」

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