豪雨被害の棚田生まれ 芋焼酎「東峰」商品化 村民企画に支援続々

西日本新聞 社会面 横山 太郎

善意が隠し味 復興へ新たな特産品に

 2017年7月の九州豪雨で被災した福岡県東峰村の棚田に植えた芋で造った焼酎「東峰」が商品化された。美しい棚田の景観を後世に残そうと、村の有志が休耕田で始めた取り組みだ。都市部の住民が苗植えや収穫を手伝い、村おこしに一役買った。「自分たちが頑張れば、必ず応援してくれる人がいる」。“応援団”の存在は、過疎にあえぐ村の復興を後押しする。

 谷あいを流れる川に沿って石積みの棚田が広がる同村宝珠山地区。竹集落の棚田は約400年の歴史があるとされ、農林水産省の「日本の棚田百選」に認定されている。

 近年、同地区では農家の高齢化や担い手不足、天候不順などによる水不足で休耕田が増加。そこに追い打ちを掛けたのが九州豪雨だった。棚田には大量の泥水が流れ落ち、川に面した石積みは崩落した。

 「もう百姓はしきらん」。高齢農家のこぼす言葉に、まず村で農業に携わる若手たちが動いた。17年8月、「東峰村棚田まもり隊」を結成。田植えや収穫作業などを請け負った。

 棚田で新たな農業の可能性を探ろうと、比較的栽培しやすいサツマイモに着目。これに合わせ、棚田米をこうじの原料にし、水は「平成の名水百選」の湧水を使ったオール東峰村産の芋焼酎を造ることにした。

 「被災地・東峰の力になりたい」。まもり隊が昨夏、会員制交流サイト(SNS)などで作業への協力を呼び掛けたところ、福岡地区を中心に市民や家族連れなどが続々と集結。竹集落の休耕田約11アールに焼酎の原料となる「黄金千貫」の苗を植え、秋に約1・5トンを収穫した。宮崎市の老舗蔵元も取り組みに賛同し、特別に生産。今春、約1200本の焼酎が完成した。

 6月13日には第2期の生産に向け、芋の苗植えを実施。村の復興支援に携わる団体やかつてボランティアで訪れた人らが駆け付け、雨の中、村民と一緒に汗を流した。仮設住宅での食事提供などに取り組んできたエフコープ生活協同組合の安元正和さん(49)は「大変な思いをされている中で頑張っている姿を見てきた。村の人たちは本当に温かい。気持ちは第二の故郷なんです」と語る。

 まもり隊の和田将幸代表(46)は「私たちにとって当たり前のものが村の魅力であることを教えてくれたのは、村外の人たち。復興に向けて一緒に取り組めることがうれしい」と感謝する。今回植えた芋で造った焼酎は来春にできる予定だ。「ただの特産品じゃない。村が好きな人たち、みんなでつくった焼酎。酒を酌み交わしながら村の将来を語り合いたい」。棚田を舞台に村おこしの夢は膨らむ。 (横山太郎)

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