コロナ新分科会 政府は知見踏まえ対策を

西日本新聞 オピニオン面

 政府の新型コロナウイルス感染症対策について、医学的見地から助言してきた専門家会議が廃止されることになった。代わりに改正特別措置法に基づく分科会が新設される。

 所管する西村康稔経済再生担当相の発表によれば、分科会には地方自治体の代表や危機管理の専門家なども加わる予定だという。コロナ禍の現状を踏まえると、多様な専門家で構成する助言組織に衣替えすること自体に大きな違和感はない。

 緊急事態宣言の全面解除から1カ月が過ぎたが、東京都や北海道では新規感染確認が続いている。全国的な再燃に備え、これまでの対策を予断なく検証して課題を解消する必要がある。

 専門家会議は「接触を8割減らす10のポイント」「新しい生活様式の実践例」といった具体的な指針を示してきた。「助言組織の役割を超えている」「国の対策を専門家会議が決めている」という印象が国民の一部に広がった面はあるだろう。

 それでも比較的早期に感染が落ち着いた要因の一つに、専門家会議の分かりやすいメッセージがあったことは事実である。

 専門家会議は自らの活動を検証し、危機感から「前のめり」になったと反省するとともに、政府と専門家組織の責任と役割の明確化などを提言している。

 今回の分科会新設は提言の方向性とも一致したものだ。ただ専門家会議に十分な事前説明がなく、メンバーが「寝耳に水」と驚くような唐突な決定は乱暴に過ぎる。本来は裏方である専門家会議が前に出る格好になったのは、政府の対応にこそ責任があると言わざるを得ない。

 安倍晋三首相が発した全国一斉休校要請や巨費を投じたマスク配布などは「場当たり的」と強い批判を浴びた。政府は国民の不満や不信をかわすかのように、専門家会議の見解を利用するようになった感は否めない。

 感染がピークを越えると、警戒を急には緩めない専門家会議と、経済活動再開を急ぐ政府の間に溝が広がったとされる。その結果として、専門家会議の「突然の廃止」があるとすれば、政府は科学的知見の軽視という批判を免れないだろう。

 人が集まる施設の営業・運営を制限し市民に外出自粛を求めれば、感染拡大は抑えられるだろうが、経済のダメージは深刻だ。感染症対策と経済のバランスについて、新たな分科会で多様な視点から論じてほしい。

 専門家集団の役割は知見を総合し、助言することだ。政府はそれを踏まえ、責任を持って政策決定し、国民に丁寧に説明すべきだ。分科会新設を機に、専門家と政治の適正な関係を構築する必要がある。

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