降ったりやんだりの季節。宮崎出身の歌人若山牧水は「曇日を最も嫌ふ」…

西日本新聞 オピニオン面

 降ったりやんだりの季節。宮崎出身の歌人若山牧水は「曇日を最も嫌ふ」と書いた。どんよりと曇っていると「頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない様な鬱陶(うっとう)しさ」を感じ、「無論為事(しごと)は手につかず、さればと云(い)つてなまけてゐるにも息苦しい」

▼それが静かに降りだした雨を見ると「漸(ようや)く手足もそれぞれの場所に帰つた様に身がしまつて来る」「机に向ふもいゝし、寝ころんで新聞を繰りひろげるもよい。何にせよ、安心して事に当たられる」というのだ

▼牧水いわく、雨を好む心は無為を愛する心。為事や心に何か企てのある時は、雨を忌んで晴れを喜ぶ。故に「すべての企てに疲れたやうな心にはまつたく雨がなつかしい」。降る雨を仰げば「いつか心はおだやかに凪(な)いでゆく」

▼一日のうちでは「朝の雨が一番心に浸む」。真っすぐに降る一筋ごとの明るさがくっきりと眼に映る。聴き入る音も悪くない、とも。「夜なかにフツと眼のさめた時、端なくこのひゞきを聴くのはありがたい」

▼マスク越しに息を吐くのもはばかられるコロナ禍の梅雨。例年以上に鬱陶しい雨も、歌人に倣って眺め、音に聴き入れば、息苦しさも少しは和らごうか

▼豪雨災害が続く昨今。牧水の頃より気象は荒々しくなったように思える。九州は先週末から大雨になった。被害が心配だ。降るのなら、大地を潤し「疲れた者を慰(なぐさ)むる」慈雨であってほしい。

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