「避難ためらってはいけない」 命を守る場、減らす密

乗り越える 九州豪雨3年(1)

 「ずいぶん少なくなったなあ」。6月下旬、大分県日田市が同市大鶴地区で開いた、新型コロナウイルス感染防止対策を踏まえた避難所運営の説明会。大肥町吉竹地区の堀義幸さん(69)は、九州豪雨で100人超が避難した近くの大鶴公民館の定員が39人になると聞き、思わずつぶやいた。

 市は、九州豪雨を教訓に、ハザードマップの配布や防災ラジオの配備といった早期避難に向けた対策を進め、被災の可能性がある土砂災害警戒区域内の避難所の見直し作業を実施した。だが「新型コロナウイルス」という新たな課題を前にさらなる見直しが求められている。

 特に3密(密閉、密集、密接)が懸念される指定避難所の運営は抜本的に見直した。受け付けで検温や問診を行うため、担当職員を1カ所2人から4人に増員。飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、家族間を2メートル空けて段ボール製間仕切りで区切った4平方メートルの中で生活してもらう。このため多くの避難所で定員はこれまでの半数以下となり、九州豪雨時に開設した42カ所だけでは足りず新たに7カ所追加した。

 それでも定員は3745人でコロナ禍前の約半数。九州豪雨時の避難者は最大954人で市防災・危機管理課は「十分対応できる」とするが、場所によっては最寄りの避難所に入れない事態も懸念される。

 高齢者が多い堀さんの地区は、大鶴公民館のほか、近くに定員111人の大明小中学校があるが、川沿いにあり九州豪雨では一部冠水したため「高齢者の避難場所として安心とはいえない」という。市は近くの施設に避難が困難な場合、親族や友人宅への分散避難を勧めるが、堀さんは「緊急時、住民の避難先の把握がスムーズにできるだろうか」と不安を募らせる。

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 九州豪雨で大規模土砂崩れが起きた小野地区。鈴連町の前自治会長、野田高徳さん(72)たちは当時、指定避難所の小野公民館や戸山中など5カ所を転々とした。避難先が土砂崩れ現場や河川の合流点に近いことなどが理由だったが、「たらい回しにされた」と感じた住民もいたという。「今度はウイルスの怖さも加わる。避難をためらう人が出てこないだろうか」。野田さんは懸念する。

 「避難所に行くかどうか、分散避難先はどこにするのかを自治会長らが事前に把握しておけば、災害時の安否確認もスムーズにできる」。防災に関する啓発や被災者支援を続けるNPO法人「リエラ」の松永鎌矢代表(30)は事前準備と情報共有の重要性を強調する。「ウイルスは対策をすれば防げる。だが災害は命に直結する。避難をためらってはいけない」 (中山雄介)

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 福岡、大分両県で死者・行方不明者42人を出した九州豪雨から5日で3年。3人が亡くなった日田市でも、行政や住民が一体となって防災対策を進めてきたが、新型コロナウイルスという新たな課題に直面している。次々と降りかかる困難に翻弄されながらも、乗り越え、歩みを続ける被災地の今を伝える。

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