3密回避へ「分散避難」仕掛ける自治体 知人宅やホテル活用も

西日本新聞 社会面 松永 圭造ウィリアム 御厨 尚陽

 新型コロナウイルス感染症の流行で、災害発生時に自治体の指定避難所以外に身を寄せる「分散避難」の重要性が高まっている。集団感染を防ぐため自治体側は収容人数の縮小を図っており、2017年7月の九州豪雨を経験した福岡県東峰村は親戚や知人宅への避難を促す。取り組みは各地で広がるが、避難をためらう人も多いとみられ、専門家は「多様な選択肢を準備するべきだ」と指摘する。

 民家約60軒が「一時避難先」。東峰村が18年11月に全戸配布した地区防災マップには、指定避難所に加え、高台に立つ民家群が明記されている。小石原地区の窯業和田隆男さん(66)は、100メートルほど離れた知人宅を避難先の一つに考えている。九州豪雨では指定避難所に続く道が通れなくなり、土砂崩れで半壊した自宅の脇の小屋で4日間過ごした。「知人宅は目と鼻の先。同居する90代の両親も避難しやすい」と話す。

 東峰村では九州豪雨当時、人口の3割に当たる約630人が指定避難所約30カ所に逃れた。今年は「3密」対策で避難者同士の間隔を2メートル空けるよう運用を改めたため収容人数が半分以下になり、村はマップにある親戚や知人宅への分散避難を呼び掛ける。住民の避難先は各行政区の区長が把握して村に報告する仕組みで、各区に物資を支給して行き渡らせることも検討している。

 長崎市も18年から「私のマイ避難所」という愛称で親戚や友人宅を避難先として検討するようチラシやホームページで求めてきた。避難先や避難のタイミングなどを記入できるシールも配り、自宅の見えやすい場所に貼るよう促す。一方で個々の所在確認は困難だとし、担当者は「生活に必要な物資は、自ら近くの指定避難所に取りに来てもらうしかない」と明かした。

 企業やホテルと協力し、避難先を確保する動きもある。福岡県鞍手町は6月、町内の高台にある工業団地のメーカーと協力協定を結んだ。工場など計9500平方メートルの敷地に、車中泊を含め約300世帯が避難できるという。

 長崎県は5月、県内288軒の宿泊施設が加盟する県旅館ホテル生活衛生同業組合と災害時の協力協定を締結。高齢者や障害者、妊婦ら要配慮者を対象に県が仲介役となり、被災市町に避難先として対応可能な施設を紹介する仕組みを整えた。担当者は「避難所で生活する被災者との不公平感が際立たないよう、工夫していきたい」と話している。 (松永圭造ウィリアム、御厨尚陽)

多様な選択肢必要

 広瀬弘忠・東京女子大名誉教授(災害リスク学)の話 避難者は、避難先の相手に迷惑を掛けたくないと考えてしまう。実際に東日本大震災や阪神大震災では、親族宅であっても避難をためらう人が多く見られた。自治体は空き家や寮の空き部屋の活用など、より一層知恵を絞って多様な避難先を確保する必要がある。

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