10万円給付、遺族にくすぶる不公平感 「生前・世帯申請」厳格すぎ?

西日本新聞 社会面 山本 敦文

 新型コロナウイルスで影響を受けた家計を支援するため国民1人に10万円を支給する「特別定額給付金」。生前に申請書類が届かず、受給できなかった単身世帯があることを紹介した「あなたの特命取材班」に、全国から制度の不公平さなどを訴える声が寄せられている。総額12兆8803億円の緊急経済対策は、人々に寄り添えたか-。

 「あの戦争を生き抜いた母親の存在が、最後になって行政に否定されたような気分だ」

 東京都内の男性会社員(57)は唇をかむ。母親(93)は5月11日に神奈川県の病院で死去。入院中の面会は感染防止のため亡くなる直前の数分間に限られた。「3密」を避けるため通夜や葬儀は行わず、姉と2人で見送った。

 給付金は基準日(4月27日)に住民基本台帳に記載された全員が対象だが、申請するのは世帯主。1人暮らしだった母親宅に自治体から申請書が届いたのは、亡くなってから3週間後。男性が窓口に持参すると「既に世帯が消滅しているため、給付できない」と突き返された。

 九州7県では、長崎県が県内21市町に問い合わせたところ、申請書発送前に死亡した単身世帯主は397人だった。他の6県は調査をしていない。

 この給付金制度には、「生前申請」に加えてもう一つのハードルが存在する。世帯単位で申請するルールの「厳格な運用」だ。

 熊本県玉名市の男性(65)は5月15日に98歳で亡くなった母親の分の支給を拒まれた。

 基準日以降に亡くなった場合でも、単身世帯でなければ遺族などによる申請が可能だが、男性の場合、同居の母親が福祉施設に入所する7年前、世帯を分離したため母親は単身世帯の扱いになっていた。入所中の費用も払ってきた男性は「ずっと同じ家族として接してきたのに…」と肩を落とす。

 総務省によると、申請を世帯単位としているのは「迅速な家計支援を重視した」(特別定額給付金室)ため。個人単位だと申請書の送付や振込口座の把握に時間がかかり、コストも膨らむ。

 丸谷浩介・九州大法学研究院教授(社会保障法)は「家計支援という制度の趣旨を考えると、今回は世帯の概念を緩やかに解釈するなど、もっと柔軟に対応すべきではないか」と話している。 (山本敦文)

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