子どもの声伝える理由 中野慧

西日本新聞 オピニオン面 中野 慧

 新型コロナウイルスの感染対策は学校でも続く。その息苦しさについて「僕たち子どもの気持ちや意見を大人に聞いてほしい」と訴えた小学6年生の投稿を26日付本紙1面コラム「春秋」が紹介した。「大人も悩んでいて君たちと一緒に考えたいと、筆者は言っているけど、どう思う?」。投稿した三小田陽(さんこだひなた)君に尋ねると「大人の正直な気持ちを聞かせてもらい、とてもうれしい。これからどんな工夫ができるか一緒に話し合いたい」と心強い答えが返ってきた。

 不安や不満を感じる子どもは他にもいる。休校中、連日のようにオンラインで本紙こども記者と話す中で画面越しに実感した。

 やっと休校が明けたものの「新たな日常」に戸惑いを隠せないようだ。「外遊びなのに走っちゃいけないんです。マスクで苦しくなるから」「感染を防ぐため給食のお代わりもおしゃべりも禁止。人との距離を空けてゆっくり配膳するから食べる時間もない」。信頼していた先生たちは休校中に転任や定年退職していた。ショックで保健室登校がやっとの子もいる。

 どれも「文句」ではなく立派な「意見表明」だろう。

 大人が「我慢するしかない」と言うのは簡単だが、それで済ませていいのだろうか。国連の子どもの権利条約には「意見表明権」がある。意見を受け止め、対話を通じて改善策へとつなげることこそが“大人の対応”だと思う。

 では、メディアはきちんと対応しているだろうか。若者との関わりについて興味深い記事を先日、インターネット上で読んだ。西シドニー大(オーストラリア)などの報告書によると、同国の新聞やテレビのニュースでは「若者が自分たちについて語る機会をほとんど与えられていない」。3分の1が地球温暖化など若者に関係するテーマにもかかわらず、だ。報告書は「メディアが彼らの関心と信頼を失い、民主主義への脅威にもなる」と警鐘を鳴らす。

 本紙「もの知りこどもタイムズ」は4月以降、休校中のこども記者の思いを特集し、学校再開を待ち望む子どもの投稿も掲載した。物事の本質を突いていると感じる意見も多かった。未来の社会を担う彼らの意見は、社会をより良くするための「考える材料」だろう。メディアにいる大人として、そんな声を伝える責任を痛感している。

 三小田君は最近、禁止されている鬼ごっこやオセロを安全に楽しむため、フェイスシールドを工作する案を先生に伝えた。対話の扉をたたく音に応えられる大人でありたい。 (こどもタイムズ編集部)

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ