犬小屋を解体した…

西日本新聞 社会面 塚崎 謙太郎

 犬小屋を解体した。手作りのすみかは、見た目の印象よりも頑丈で壊すのに難儀したが、念入りなくぎの数や修繕の跡に、亡き義父のこまやかな慈愛が感じられた。

 妻の実家で、義父が真っ黒い子犬を譲り受けてきたのは15年前。2歳の孫、つまり私の息子が喜ぶ顔を見たいという“じいじ心”からだ。帰省の楽しみに、犬と息子、日々成長する「2人」との散歩が加わった。私だけで連れ出す日もあった。全てを分かっているかのような優しい瞳に悩みや迷いを打ち明けると、すーっと気が楽になった。

 犬小屋が消え、ぽっかり空いた庭の一角。もう一回頭をなでてやりたかった、あのとき見切り品じゃなくて上等な肉を買ってやれば…と、小さな後悔があふれてきた。引っ越し続きでペットを飼った経験のない私は、ペットロスの哀惜を初めて知った。でも思い出は更地にはならない。いつものコースをまた、散歩しようと思う。 (塚崎謙太郎)

PR

デスク日記 アクセスランキング

PR

注目のテーマ