コロナ禍…苦境に立たされた障害者事業所 公的支援も乏しく

西日本新聞 社会面 大坪 拓也

 新型コロナウイルスの影響で、多くの障害者就労事業所が生産収入減に見舞われ、利用者の生活に影を落としている。手掛けた商品の販売機会の減少や、業務受注先の企業の不振が原因で、公的支援も企業などと比べて乏しい。就労支援を縮小する事業所が出てくれば障害者の働く機会が奪われかねず、自立を阻んでしまう懸念が膨らむ。

 香ばしいクルミをしっとりした生地でくるんだ「丸型食パン」。福岡県桂川町の「障害福祉サービス事業所 ひなの家」の利用者が良質な原料から作った。専門店が並ぶ百貨店の催事でも売れ筋の商品だが、販売量はめっきり落ち込んだ。

 パン製造は、企業などで就労することが困難な人が軽作業を行う「就労継続支援B型事業」の柱。利用者には販売収入に応じて工賃が支払われる仕組みだ。

 コロナ禍により、福祉施設などでの移動販売やバザーは4月から休止に。小康状態になった5月中旬に再開し、客足は戻りつつあるが従来とは程遠い。別の収益源として頼る建築塗料会社での塗料缶の仕分けも、経済停滞で今月まで受注できない状態だ。

 4月のB型事業の売り上げは約22万円、5月は約18万円で前年同月から半減。利用者11人の平均月額工賃は約3万1千円から約1万8千円に減少した。施設のグループホームで暮らす場合は家賃や医療費などに月約8万円かかり、障害年金を足して何とかしのいでいる人もいる。

 工賃を受け取る日が楽しみという男性(52)は「早く元に戻りたい」とつぶやく。ひなの家の山崎真史課長は「経済が悪くなれば、私たちのような末端が真っ先に切られるのでは」と先行きを心配する。

 福岡県の調査によると、雇用契約を結ぶ「就労継続支援A型事業」とB型を行う県内計243事業所(回答数)のうち、7割が2~4月の売り上げが減少。大分県の調査でも、県内計200事業所(同)のうち8割が4~5月の仕事が見通しを含め、減少したことが判明した。

 苦境の背景には事業所の競合もある。厚生労働省によると、全国のB型事業所数(昨年7月)は約1万2700、利用者は約26万人。事業所は5年間で1・3倍に増え、販売競争や受注作業の取り合いで、収益難のところも少なくない。

 国の支援も頼りづらい。B型は利用者と雇用契約を結ばないため、企業が払った休業手当の一部を国が補助する雇用調整助成金を活用できないのだ。国は活動収入が大幅減のB型事業所などに最大50万円の補助事業を予定するが、「不十分」との声は根強い。

 さらに国から事業所に支払われる報酬額は実績ベースのため、本年度の平均工賃が大幅に下がれば来年度の支給額も減る見込み。収益低迷が続くと経営が圧迫される懸念もある。

 埼玉県立大の朝日雅也教授(障害者福祉)は「事業所の努力に多くを委ねる工賃システムの課題が浮き彫りになった。公的支援の強化は当然だが、障害者の就労は労働と福祉の両面性があり、どう位置づけるか改めて問い直し制度改善につなげる必要がある」と指摘する。 (大坪拓也)

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