九州の豪雨災害 「気候危機」時代に備えよ

西日本新聞 オピニオン面

 今年の環境白書は近年の気象災害などについて「気候危機」との言葉を初めて使い、社会の変革を促した。

 地球温暖化の進行とその影響は「もはや単なる『気候変動』ではない」とし「人類と生物の生存基盤を揺るがしている」と強い危機感をにじませた。新型コロナウイルスと並ぶ脅威だとも位置付けている。

■球磨川の全域で氾濫

 多くの人にとって、決して大げさな警告には聞こえないだろう。この3年間だけでも私たちは九州豪雨、西日本豪雨台風19号という甚大な風水害を1年ごとに経験してきたからだ。

 そしてきのう、熊本、鹿児島両県に大雨特別警報が出され、またしても豪雨が広範囲に被害を及ぼした。

 熊本県内を流れる1級河川、球磨川はほぼ全域で氾濫した。人吉市など流域市町村とその周辺では架橋流失や土砂崩れ、家屋倒壊が続いた。初動対応が明暗を分ける。孤立した人々の救助や安否不明者の捜索、避難者の支援にも全力を挙げたい。

 梅雨前線は停滞しており、引き続き厳重な警戒が必要だ。

 毎年のように繰り返される悲劇に改めて言葉を失う。あの九州豪雨が発生したのはくしくも3年前のきょうである。福岡、大分両県で死者・行方不明者42人を出した。

 教訓は多岐にわたる。福岡県朝倉市を中心とする被災地では今なお、復旧・復興工事の大型ダンプカーが列をなして往来している。

 豪雨はあの日、山あいの同県東峰村から大小の河川を下り落ち、隣の朝倉市を貫く本流の筑後川になだれ込んだ。濁流は護岸をえぐり、民家や車をのみ込んだ。山肌は削られ、汚泥とおびただしい数の流木がいくつもの集落を襲った。家屋被害は4500件を超えた。

 朝倉市によると、被災世帯のうち約50世帯はいまだ恒久的な住まい再建のめどが立っていない。なお続く復旧工事のため、再建場所が決められないことなどが影響しているという。

 河川はただ原形に戻すのではなく、大雨に強い改良型への改修が続く。蛇行や勾配の修正は相応の時間と技術を要する。

 一度大災害に見舞われれば、完全な復興には5~10年単位の年月と膨大な資金や人手が求められる-。災害列島・日本の現実である。

■将来見通す交通網は

 九州豪雨の被災地では、他の被災地にも通じる課題が5月にようやく大筋で決着した。

 豪雨で一部区間(約29キロ)が不通となったJR日田彦山線である。鉄道での復活を断念し、代替策としてバス高速輸送システム(BRT)を導入する方向となった。

 3駅がある東峰村では鉄道復旧を望む声が最後まで強かったが、JR九州が求める巨額の費用負担には耐えられない。BRT案で先行した福岡県添田町、大分県日田市とつながる沿線3自治体で足並みをそろえた。

 被災した鉄道の赤字路線をいかに扱うかのモデルケースとしても注目され、合意形成には3年もの時間を要した。

 現実的で実効性があり、被災地の将来を活性化する手段として交通手段をどう考えるのか。鉄道会社の使命や自治体の役割を含めて検証するべきだろう。

 九州で1時間50ミリ以上の非常に激しい雨が降る回数は、1980年代の1・5倍近くに増えた。気候変動の影響により、高い海面水温で発生する水蒸気をエネルギーにして大雨が発生しているとみられている。

 きのう熊本、鹿児島を襲った豪雨は広域にわたって河川氾濫が起こり得る現実を改めて見せつけた。もはや「洪水は起きる」ことを前提にしたハード、ソフト両面での対策が必要だ。

 「気候危機」への備えは待ったなしである。

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