熊本豪雨被災地 助け待つ人々に早く手を

西日本新聞 オピニオン面

 目を覆うばかりの惨状だ。熊本県を中心に九州南部を襲った豪雨による被害の規模と実態が徐々に明らかになってきた。

 自然災害における被災者の救護はまず時間との闘いである。安否不明者の救出や孤立した人々の救助、避難生活者の支援に全力を注ぎたい。

 おととい起きた豪雨災害の最大の特徴は、熊本県内を流れる球磨川のほぼ全域で氾濫が起こったことだ。流域を中心に多くの市町村が被災した。積乱雲が次々に発生して帯状になる「線状降水帯」が上空を西から東へ移動したとみられている。

 球磨川は九州の1級河川では筑後川、川内川に次ぐ延長115キロを誇る。険しい山々を縫うように流れることから一度洪水を起こすと「暴れ川」と化す。一方、その河川水が流域に豊かな穀倉地帯を形成してもいる。

 今回、濁流はいとも簡単に人々の生活の場を襲い、命を奪って、集落を寸断し、市街地を冠水させた。心肺停止状態で見つかった人たちには、浸水した特別養護老人ホーム(球磨村)の入所者も多数含まれている。

 被災から3日目を迎えた。建物内に取り残されたり、倒壊家屋の下敷きになったりして、救出を待つ人がまだいると考えるべきだ。八代市の旧校舎グラウンドでは、上空から見えるような「SOS」という文字が確認されている。

 災害で救助を待つ人の生存率は72時間を超えると急激に低下するとされる。現地は電話や水道、電気などのライフラインにも深刻な影響が出ている。道路は寸断され、再び大雨となる予想もある。困難は伴うが、粘り強く作業を続けてほしい。

 避難所は既に100以上が開設されている。今回の豪雨は予測しにくい突発型だった。新型コロナウイルスの感染を防ぐため人の密集を避ける対策が間に合ったかどうか、不安材料だ。

 内閣府は感染防止策として、ベッドにも使える段ボール箱や体温計、パーティションといった物資を送り始めた。避難生活は長期化する恐れがある。現地のニーズを確かめるより先に送り手の意思を優先するプッシュ型の物資援助を続けたい。

 行政間の連携も重要だ。熊本地震(2016年)では、福岡市などが支援の職員や物資を熊本市に送り込むなど迅速に対応した。いま被災地には警察、消防、自衛隊、海保などさまざまな組織が派遣されており、その調整も課題の一つだ。

 九州豪雨(17年)の際は、被災者に熊本地震の被災者が避難生活の体験談やノウハウを伝えた。被災者のニーズは日々変化するという。こうした生の教訓も今回最大限に生かしたい。

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