「かわいかねー」貸しEVで八女観光 コンパクトな車体、非日常感

 福岡県八女市でこのほど、観光客向けに1人乗りの小型電気自動車(EV)のレンタルが始まった。古い町並みや古墳、茶畑、のどかな里山の景色など、見どころが各地に広がる八女市。公共交通の乏しさを補おうと、市中心部を拠点とした滞在型観光を推し進める八女商工会議所が3台導入した。自由に動き回れる交通手段の提供にとどまらず、移動そのものも楽しめると聞き、さっそく試しに走ってみた。

 貸し出しを行うのは、白壁の町家が並ぶ一角にある観光拠点「八女市横町町家交流館」。EVはトヨタ車体の「コムス」で、四輪ながら車幅約1メートルと、軽自動車よりもさらに40センチほど小さい。それぞれ白地に八女特産の「あまおう」「茶」「ちょうちん」が描かれている。2~3時間のモデルコースが入力されたタブレット端末も一緒に貸し出しており、行きたい場所まで誘導してくれる。まずは八女で制作活動をしていた画家、坂本繁二郎ゆかりの地を巡るコースを選択した。

 座席に座ると、視界は普通乗用車とさほど変わらない。アクセルを踏み込むと、じわりと加速した。案内に従って「坂本繁二郎画伯資料室」がある市立図書館や旧居、アトリエ跡などを巡った。途中、細くカーブする農道もあったが、車体が小さいのでスムーズに走り抜け、田畑を眺める心の余裕もあった。ハンドル操作は乗用車と変わらない。小型のため路面に凹凸があると車体が傾くが、安定感があるのですぐ慣れた。

 戻る道すがら、散歩する幼稚園児の一団に出会うと、一斉に興味津々の視線を浴びた。信号待ちでは通行人の「かわいかねー」といった声が耳に入り、こちらはやや照れくさいが、この非日常感が旅気分を盛り上げてくれそうだ。

    ◇   ◇

 操作に慣れたため、次は国道を通る「八女中央大茶園・古墳周遊コース」を回ることにした。国道は交通量がぐっと増え、アクセルを強く踏み込んだ。時速は50キロ近い。安定した走りで、うまく流れにも乗った。大茶園の展望台へと続く坂道も難なく登り切った。

 商議所によると、万が一の事故を避けるため、モデルコースはなるべく右折が少なく、かつ景色が美しい通りを選んでいるという。

 車内には、EVに分乗した近くの仲間と会話できるよう、無線による通話装置も備える。通り慣れた道を走っていても、ゴトゴトと揺れるEVの新鮮さも相まって時間を忘れそうになるが、気をつけたいのが充電切れ。バッテリーの残量が少なくなるとアラームが鳴って知らせてくれるが、余裕を持って運転したい。

 単なる「足」という範囲を超え、走る楽しみも味わえるEV。車がない観光客はもちろん、自家用車を持っていても、あえてEVをレンタルするのもありだと感じた。 (丹村智子)

 電気自動車の貸し出し 八女市横町町家交流館(同市本町)で午前10時から受け付け、返却は午後4時まで。予約優先。月曜休み。料金は1時間1100円。同館=0943(23)4311。

 電気自動車「コムス」 約6時間のフル充電で約50キロ走れる。最高時速は60キロ。普通免許で運転できる。道路交通法では普通自動車扱いになり、二輪車のように二段階右折はしない。沖縄などで観光利用の事例があるほか、東京や愛知県豊田市では市街地で車両を共同利用するサービスに活用されている。

関連記事

福岡県の天気予報

PR

PR