高齢者どう避難?特養手探り 夜間は職員手薄、避難先の態勢不十分

西日本新聞 佐賀版 梅本 邦明

 熊本県南部を中心とした豪雨で特別養護老人ホーム(特養)の利用者が亡くなり、自力で避難できない災害弱者への脆弱(ぜいじゃく)な支援体制が改めて浮き彫りになった。佐賀県内の特養は定期的に防災訓練をして万が一に備えるが、夜間は高齢者を見守るスタッフが手薄で、避難先の受け入れ態勢の不備もあり、福祉関係者は対応を模索する。

 熊本県球磨村の特養「千寿園」は氾濫した球磨川の支流近くにあり、4日早朝に濁流に襲われ、14人の死亡が確認された。

 「夜勤体制で熊本のような水害が起きたら、助かるのは現実的に難しいだろう」。鳥栖市田代本町の特養「ひまわりの園」の太田秀三施設長はこう指摘する。

 3階建ての施設は要介護3以上の約60人が入所。車椅子利用者や認知症の人もいて「入所者が自力で移動し、自分の判断で逃げるのはまず無理」と語る。

 昼間は17人前後の職員が食事や入浴を世話するが、夜間は職員4人に減る。水害ではエレベーターが故障する可能性もあり、夜の短時間に少人数で入所者を抱え、上階や外に逃げるのは困難。冠水の状況次第では職員の応援も見通せない。

 県内には特養が58施設あり、県は原則年2回以上の防災訓練実施を指導する。

 ひまわりの園は年2回訓練するが、入所者を施設外に避難させるような形は取っていない。「下手に動くと高齢者がパニックになったり、転倒により骨折したりする恐れがある。安全な施設内にとどまるのが基本的な考え方」と太田施設長。

 そもそも避難所となる公民館や体育館は、手すりや車椅子対応のトイレ、おむつの交換場所が不十分で、高齢者が安心安全に過ごせる環境は整っていない。さらに新型コロナウイルス感染のリスクもある。

 嬉野市塩田町の特養「済昭園」は大雨に見舞われた6日夕、数十メートル離れた塩田川の氾濫を警戒し、利用者約70人を高台にある別の建物に避難させた。

 出勤中のほぼ全職員が急きょ対応。運営する社会福祉法人の小佐々徹正副理事長(43)は「熊本のように浸水が早ければ対応が厳しい。風水害の訓練により力を入れていく」と話した。

 災害弱者の支援について、西九州大の滝口真教授(社会福祉学)は「介護現場と行政は人員に限界がある」と指摘。「行政が警備会社など民間の力を活用できるように連携するべき。また、手厚い人員配置には報酬が加算されるような仕組みづくりも必要」と訴えた。 (梅本邦明)

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