「死」が何度もよぎる…水没の特養ホーム、職員と住民が覚悟の救助

西日本新聞 一面 四宮 淳平 松永 圭造ウィリアム

 一つ屋根の下に寄り添い、共に暮らしたお年寄りたちの和やかな日常は、突然奪われた。4日の記録的豪雨による球磨川水系の氾濫で、水没した熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」。入所する80歳以上の男女14人が犠牲になった。一方で、身の危険にさらされながらも、施設職員や住民たちが入所者の救出活動に努めていた。救われた命も多数あった。

 村議の小川俊治さん(72)が施設に駆け付けたのは、断続的に激しく雨が降っていた4日の午前6時ごろ。施設職員や住民ら15人ほどが、入所者が乗った車いすを3、4人がかりで2階に次々と担ぎ上げていた。

 「バーン」というごう音とともに窓ガラスが割れ、施設内に濁流が流れ込んできた。小川さんは1階で入所者を救出しようとしていたが水かさが増し、あっという間に足がつかない状態に。小川さんは別の救助者と一緒に入所者の胸元をつかんで引き上げ、浮遊するマットを胸の下に押し込んで体を水に浮かせた。

 そのままの状態が3時間ほど続いた。入所者がずり落ちるたびに引き上げ、バランスを崩した小川さんは水に沈んだ。「頑張れ」。声を掛け合ったが、何度も「死」が頭をよぎった。

 助かる兆しが見えた。2階にいた施設職員たちが天井を壊し、ロープを下ろしてくれた。浮遊する人たちは順番に引き上げられた。小川さんが支えた入所者は無事だった。

 2階に逃れても、少しずつ迫る茶色の水に皆がおびえた。上空には、施設の危機を知ったヘリコプターが旋回している。やがて水は引いていった。午後6時半ごろ、無事だった入所者は次々と病院に搬送された。多くが脱水症状や低体温症などに陥っていた。

 村役場職員の大岩正明さん(51)も溺れそうになりながら救出活動を行った。入所する母ユウコさん(83)は残念ながら犠牲となった。経験した未曽有の大災害。「誰が流されるか分からない危険な状態で、多くの人が最後まで精いっぱいやってくれた。感謝しかない」 (四宮淳平、松永圭造ウィリアム)

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