ロシア憲法改正 強権統治の長期化を憂う

西日本新聞 オピニオン面

 自らの権力維持を最優先し、終身大統領制を敷いたといっても過言ではなかろう。

 ロシアのプーチン大統領が主導した憲法の改正である。全国投票で8割近い賛成を得て、承認された。

 任期切れの2024年以降も最長2期12年、その座にとどまれるようになった。4年間の首相在任を挟み、最高指導者として君臨し続け、今年で通算20年に及ぶ。主要国の首脳では異例の長さである。

 プーチン氏は旧ソ連崩壊後の混乱から国を立て直し、原油高を背景にした経済成長で国民生活に安定をもたらした。

 その半面、自身に批判的な政治勢力やメディアを排除して強大な権力を築いてきた。今回の改憲でさらに権威主義を強め、民主主義や法の支配を軽んじた強権統治が長期化するのではないか。憂慮せざるを得ない。

 改憲の議論は今年1月、プーチン氏が突如提起した。大統領任期の連続3期を禁じた従来の規定では次の選挙に立候補できなかったが、改憲前に務めた任期を例外とする規定を設けた。

 大統領の任期は国家運営の重大な規定だ。にもかかわらずプーチン氏は正面から問うことを避けた。改正項目は年金受給額や最低賃金の改定など誰もが反対しにくいものを含めて200以上あり、投票は一括して承認か否かを選ぶ方式だった。

 国営メディアが連日、投票を呼び掛けたが、大統領任期については触れなかった。反対派の集会は新型コロナウイルス対策を理由に許可しないなど、なりふり構わず改憲を強行したように見える。

 長引く経済低迷にコロナ禍が重なり、プーチン氏の支持率もこの20年で最低水準に落ち込んでいる。国内にも独裁体制の長期化を危ぶむ声はくすぶる。

 そうした閉塞(へいそく)感から国民の目をそらそうと対外関係で一段と強硬路線を取る恐れがある。改正憲法に国際機関の決定は「憲法と矛盾する場合は無効」と盛り込んだ。国際協調より自国の利益を優先する姿勢を鮮明にしており、看過できない。

 14年の一方的なクリミア半島編入で国際的に孤立し、制裁を受け国内経済の疲弊を招いた。その経緯を省みれば、何が問題だったのかは明らかである。

 改正憲法で日本にとって見逃せないのは領土割譲を禁止する条項だ。北方領土の返還に応じない根拠としないよう、日本はくぎを刺さなければならない。

 ロシアとの平和条約締結と領土問題は切り離せない。安倍晋三首相はプーチン氏との親密さを演出するような手法を改め、交渉を進展させるための戦略を練り直すべきだろう。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ