平和学習にもコロナの影 授業足りず講話断念

西日本新聞 社会面 小林 稔子

「証言届ける」DVD制作も

 戦後75年となる今年、大空襲や「原爆の日」といった節目の日に、恒例の平和学習や戦争体験者の講話を取りやめる学校が出ている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休校が長期化し、通常の授業時間が不足していることなどが理由だ。危機感を募らせる体験者らはDVDを制作して学校に貸し出し、後世への記憶の伝承を途絶えさせまいと懸命に取り組んでいる。

 福岡市の学校にとって6月19日は、戦争の記憶を風化させないための大切な日だ。75年前のこの日、900人を超す犠牲者を出した福岡大空襲があったことを児童生徒の心にしっかりと刻んでもらうため、例年、平和学習が重点的に行われる。昨年も市立小中学213校全てで、戦争体験者による講話などが行われた。

 だが、市教育委員会によると、今年は七つの小中学校で平和学習自体が行われなかった。市立校では新型コロナの影響で約3カ月間、休校措置が取られ、6月から一斉登校が再開されたばかり。「授業を進めるため」(市教委)、19日の実施を断念せざるを得なかったとみられる。

 コロナの感染再拡大で休校や分散登校が長引いた北九州市では例年、7月を平和学習月間とし、全市立小中学191校で体験者の講話やDVD観賞、絵本の読み聞かせなどを行ってきた。市教委は「今年は全校集会は難しいかもしれないが、感染症対策を講じながら各校が工夫して平和学習は行う予定」としている。

 長崎県内の小中学校や高校でも例年、「長崎原爆の日」(8月9日)は夏休み中の登校日にして集会を開いているが、同県壱岐市の小中学校では今年、同日を登校日としない。県内他市に比べ、1学期が同月7日までと長いためだ。「8月9日はテレビで放送される式典を家庭で見て、黙とうしてもらうよう指導する」(市教委)としている。

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 福岡大空襲の体験者の中にはコロナ禍の中でもできることとして、DVDで証言を保存し後世に伝える取り組みを始めた人もいる。

 「炎と風とですごい状態だった」「不発弾が(避難した)防空壕(ごう)から10メートル先の畑にうずまるように落ちていた」。40分間のDVDには、当時小学2年生だった高橋英人さん(82)の証言が収録されている。

 高橋さんは福岡市の退職教員らでつくる市民団体「戦争体験を語り継ぐ会」(福岡市)の代表。毎年、同団体の体験者らが市内の30~40の小中学校に出向き語り継いできたが、今年は2校にとどまった。

 「学校は授業時間を確保するのも大変。講話の依頼はないだろう」。5月、そう考えた高橋さんらは「校内放送で流すなどしてもらえれば」と、急きょDVDを制作。複数の学校に貸し出した。現状では困難なことは理解しているが、「やはり証言は直接届けたい」と高橋さん。声が出る限り、活動は続けるつもりだ。

 福岡大空襲で176人が犠牲になったとされる同市中央区の簀子公民館でも、地域住民ら約20人を取材してまとめたDVD「簀子ヒストリア 福岡大空襲の夜 火の雨が降った」を学校や地域住民に貸し出している。2年前に制作した2時間の作品を、子どもたち向けに30分間に再編集した。8月中旬ごろまで貸し出す予定だ。同公民館=092(712)2268。 (小林稔子)

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