「一党支配」に批判票 シンガポール総選挙 与党、初の議席9割割れ

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】10日投票のシンガポール議会総選挙(一院制、定数93)の開票結果が11日未明に発表され、独立から一党支配を続ける与党人民行動党(PAP)は83議席を獲得して大勝したが、初めて占有議席が9割を下回った。一方、改選前に野党唯一の6議席を持っていた労働者党(WP)が10議席を奪取し、野党史上初めて2桁に伸ばした。

 笑顔なき勝利宣言だった。11日未明、PAP率いるリー・シェンロン首相は記者会見で「明確な信任を得た」と評価する一方で「得票率は期待していたほど高くなかった」と漏らした。

 PAPの得票率は61・2%。2011年総選挙での史上最低(60・1%)は上回ったが、前回15年の69・9%から大きく下げた。新型コロナウイルスの影響で史上最悪の経済危機にひんする中で早めの解散総選挙に踏み切り、与党の圧倒的多数の議席が危機克服に必要と訴えたが、思惑は外れた。リー首相は「国民が感じている収入減や雇用不安の痛みを反映する結果になった」と厳しい表情で語った。

 WPは新進気鋭の学者や経済人らを擁立、最低賃金制度の導入や移民労働者の待遇改善などを訴えたのが奏功。改選前議席を守ったほか、各党4~5人ずつで争う集団選挙区では現職閣僚らを擁立したPAPに競り勝った。党のプリタム書記長は「陶酔感はない。信頼される野党としてすべきことを進める」と述べた。

 リー首相の弟が入党して「一党支配の打破」を訴え、注目された新党シンガポール前進党(PSP)は議席を取れなかったが、集団選挙区でPAP側に3ポイント差に迫る接戦を演じた。

 リー首相は従来、今選挙後に首相職を若手に禅譲する考えを示唆し後継候補を要職に引き上げてきた。11日の会見でも早期に禅譲する方針を示したが、選挙で「特に若い有権者が野党の勢力拡大を求めた」と気づかされる結果になった。首相の父で「建国の父」と称される故リー・クアンユー氏から続いた「リー時代」の終わりが近づく中で、PAP以外の選択肢を求める若い世代が増えている意味は小さくない。

 北九州市立大の田村慶子教授(国際関係論)は「与党はコロナ禍という危機を強調することで大勝を期待したが、有権者は冷静だった」と指摘。政府がインターネット投稿などの規制を強化していることを挙げ「批判者を抑え込む手法は今後、逆効果になる。さらなる民主化を進めることが求められる」としている。

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