鹿児島に新知事 再び託された県政の刷新

西日本新聞 オピニオン面

 鹿児島県の有権者は再度、変革を選択した。無所属7候補で争った知事選は新人で元九州経済産業局長の塩田康一氏が当選した。2期目を目指した現職三反園訓(みたぞのさとし)氏や返り咲きを狙った元職伊藤祐一郎氏らを退けた。

 塩田氏は政党や大組織の支援を受けず「古い前でもない、駄目な今でもない。新しい鹿児島をつくろう」と訴え、支持を広げた。この言葉の重みを忘れることなく、新たな県政を展開することを期待したい。

 自民・公明の与党は前回、伊藤氏を支え三反園氏に大敗し、今回は三反園氏を推薦して敗れた。国政の課題が争点だったわけではないが、保守地盤の厚い鹿児島での連敗は政権与党としても決して軽視はできまい。

 中央省庁の官僚OB知事が続いてきた鹿児島で、民放のキャスターから転身した三反園氏は初の民間出身として注目され、県政刷新に期待が集まった。

 ところが今回、自公の推薦を受けるに至った政治姿勢の分かりにくさが指摘され、告示前に県内首長への露骨な集票依頼の事実も発覚し、逆風が吹いた。

 三反園氏の前回選挙は「脱原発」を掲げ、野党の支援も受けた草の根型だった。今回は新型コロナウイルス対応などの公務を優先したとはいえ、前回は三反園氏を押し上げた民意の多くが離れたことは否めない。

 原因はいくつかあるだろう。特に注目したいのは原発を巡る「変節」だ。

 三反園氏は知事就任後、九州電力川内原発(薩摩川内市)について、県の専門委員会による安全性論議が不十分とされるまま九電の検査結果を了承し、稼働をすんなり容認した。

 これには根強い批判があり、三反園氏がその後、説明責任を十分果たしたとも言い難い。

 原発立地県の知事として、いかに県民の安全を確保するか。原発を国策として推進してきた経済産業省出身である塩田氏にとっても大きな課題だ。経産省の枠を飛び越えた発想が求められる。これこそ、県政刷新とともに有権者から新知事へ託されたと考えるべきだろう。

 塩田氏は公約で川内原発について「(4~5年で運転期限40年を迎える)1、2号機の20年延長は必要に応じて県民投票を実施」「県の専門委に原子力政策に批判的な学識者も入れる」などとした。原発への多様な意見に配慮したと言える。専門委についても、本来の目的である安全性の検証を徹底する組織でなければならない。

 鹿児島県政はコロナ禍で苦しむ中小企業支援や観光産業立て直しなど課題山積だ。経産省での経験をどう生かすのか、いきなり手腕が問われよう。

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