線状降水帯の発生予測、精度が課題 熊本の豪雨前日に察知できたが…

西日本新聞 総合面 森井 徹

 帯状に連なった積乱雲が突発的な豪雨をもたらす「線状降水帯」の発生予測に注目が集まっている。九州では最先端の実証実験が始まっており、熊本県で甚大な被害が出た4日の豪雨でも事前に危険を察知していた。ただ、現在の技術では予測精度が高くなく、自治体に避難行動を促すまでには至らなかった。専門家は「精度が向上するまで、当面は住民が危機意識を高めるしかない」と指摘する。

 「線状降水帯の発生の可能性があります」

 豪雨被害が出る前日の3日夕。熊本市の防災担当部署には、危険を知らせるメールが届いていた。

 差出人は、防災科学技術研究所。福岡大や日本気象協会などと連携し、線状降水帯の発生を予見する実験に取り組んでいる。

 大気中の水蒸気量を観測して兆候をつかみ、発生する可能性が高い地域を12時間前に予測。自治体に情報を伝え、住民の早期避難で被害を軽減させる-のが研究の柱だ。発生2時間前に警戒すべき地域を特定することも目指す。

 防災科研によると、3日午後6時から4日午前6時の間に、熊本から鹿児島にかけて線状降水帯が発生する可能性の高いことを3日午後3時半ごろに察知。研究に協力している熊本市や鹿児島市にメールで伝えた。

 気象庁が熊本県と鹿児島県に大雨特別警報を出したのは4日午前4時50分。予測は正しかったが、水蒸気量が多い梅雨時期は発生の予測が出やすく、熊本市の防災担当者は「現状では危険度が分かりにくく、避難情報の判断には使いにくい」と率直な意見を口にする。

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 実証実験の舞台に九州が選ばれたのは、水蒸気をたっぷり含んだ東シナ海からの湿った空気が最初に流れ込む地形から、線状降水帯が発生しやすいとされるからだ。近年は梅雨時期を中心に豪雨災害が繰り返され、極めて短時間で大雨になるケースも少なくない。

 今回、被害の大きかった熊本県人吉市では、避難準備を促す目安となる大雨警報を3日午後9時39分に出した。避難勧告や避難指示の目安となる土砂災害警戒情報を出したのは、そのわずか11分後だった。

 熊本県南部にある自治体の防災担当者は「避難の最中に被害が出るかもしれない」と不安を抱えつつ、この日の深夜に避難勧告を出した。「もっと早く避難を呼び掛ける根拠になる情報があれば助かる」。予測の精度が上がることを期待する。

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 研究グループは6月、長崎県に水蒸気を観測する新たな機器を設置し、21年には地上デジタル放送の電波を利用した観測機器も導入する方針だ。防災科研の清水慎吾研究総括は「発生を見逃すことはほとんどないが、(場所や時間を)正確に当てられる確率は低い。自治体が信頼して活用できる情報を出せるよう精度を上げたい」と話す。

 広瀬弘忠・東京女子大名誉教授(災害リスク学)は「住民は突発的な豪雨の予測が現状では難しいことを理解した上で、自己判断で早めの避難行動を取ることが必要だ。自治体は空振りを恐れず、さまざまな情報を基により早く避難を呼び掛けるよう心掛けてほしい」と指摘する。

(森井徹)

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