物語の核は熊本地震、いかに生きるか問う 直木賞受賞の馳星周さん

西日本新聞 藤原 賢吾 平原 奈央子

 6度の落選を経て直木賞に輝いた馳星周さんは、サラブレッドの生産地で知られる故郷の北海道浦河町で吉報を受けた。

 「故郷のみんなが、競馬のG1で勝ったかのようにめちゃくちゃ喜んでくれています」

 受賞作は、東日本大震災と熊本地震が物語の核となる。本人も東日本大震災後の東北で惨状を目の当たりにした。熊本地震も取材で四国滞在中に発生。鳴り響く携帯のアラートに驚かされる経験をした。ビデオ会議アプリで応じたオンライン会見で、馳さんは熊本などで甚大な被害が広がる本夏の豪雨も念頭に「自然災害が日常になりつつある」としみじみと語った。新型コロナウイルス禍も挙げ、「人間はこれからどう生きていくべきなのかを問い続ける」との誓いを立てた。

 「ほっとした」。受賞作の沖縄など場所にこだわり書き続けてきた高山羽根子さんは3度目の挑戦での栄冠に思わずこう漏らした。本作の主人公は、外国人にリモートでクイズを出す仕事をする設定。昨年執筆したがコロナ禍を予見する内容で「想像つかないシンクロ」と自身で驚きつつ、「技術によってどことでもつながる怖さ、気味悪さ、不安、不穏を書いていきたい」と決意を新たにした。

 平成生まれ初受賞の遠野遥さんは、「ウイルスとかあるんで」とマスク姿で会見に臨んだ。良識と暴力性などの「アンバランスさ」が新しい人間像として評価された主人公について、「変なキャラクターにしようと思っていなかった。もう少し親しみを持ってもらえたら」と説明し、「歴史ある賞をもらえるのは驚き」とはにかんだ。

(藤原賢吾、平原奈央子)

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