球磨焼酎、豪雨でピンチ 人吉の老舗蔵元、原酒2万リットル流失

西日本新聞 熊本版 中村 太郎

 熊本県南部を4日に襲った豪雨は、人吉球磨地域特産の球磨焼酎の蔵元にも深刻な爪痕を残した。大和一酒造元(人吉市下林町)は、貯蔵庫が床上3メートルまで浸水。原酒約2万リットルが流失し、再開は見通せない。

 下田文仁社長(53)によると、4日午前7時ごろに貯蔵庫の木製の扉が押し破られ、濁流が一気に流れ込んできたという。道向かいの自宅2階に避難して無事だったが、水が引いた後に貯蔵庫に戻ると、原酒が入ったタンク13本は倒れたり水に漬かったりして、中身がすべて駄目になった。瓶詰めを終え、出荷を待つばかりだった一升瓶約3千本も全て泥に漬かった。

 明治期に造られた石組みの麴(こうじ)室も天井まで水に漬かってかびが生え、木製の天井を張り替えたり消毒したりしなければ使えなくなってしまった。「売れるものがない。焼酎は麴づくりから出荷まで半年はかかる。どうやって食いつなげばいいのか」。下田社長は、肩を落とした。

 1898(明治31)年からの屋号を守る老舗は、球磨川支流の万江川から約300メートル東に位置。1965年の大水害時も浸水被害を受けたが、当時は膝丈程度で「ここまでの被害は予想できなかった」という。

 被災後、近隣の蔵元や、取引先の小売店関係者が、入れ代わり立ち代わり手伝いに来てくれる。下田社長は「みんなが支えてくれる中で泣き言ばかり言ってられない。先は見えないが、前向きに一歩ずつ歩くしかない」と気丈に語った。

 球磨焼酎酒造組合によると、加盟28蔵元のうち大和一酒造元を含む3社が大規模な浸水被害を受けたほか、崖崩れでタンクが傾いたり、瓶詰めのラインが数十センチ浸水したりした蔵元もあるという。球磨焼酎は小規模経営で地元消費向けの蔵元が多く、同組合の田中幸輔専務理事は「人吉市の繁華街一帯が水没したことで需要が落ち込み、被害がなかった蔵元の売り上げも減る恐れがある」と懸念している。 (中村太郎)

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