「目玉」一転、政権の重荷に GoTo見直し論浮上

西日本新聞 総合面

 新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込む経済を回復させる起爆剤として22日開始予定の「Go To トラベル」。政府、与党内に見直し論が浮上したのは、予定通り進めて感染が全国に広がれば、失政の批判を免れないからだ。ただ、土壇場の縮小や先送りは宿泊キャンセルを誘発し、消費者心理に冷や水を浴びせることになりかねない。起死回生を狙った経済対策の目玉事業は皮肉にも、政権を揺るがす懸念材料になりつつある。

 15日開かれた衆院予算委員会閉会中審査。野党は22日の事業開始を譲らない政府を突き上げた。「感染拡大が収束したと判断したのか」(国民民主党の馬淵澄夫氏)、「コロナ禍の最中に政府が旅行推進キャンペーンをやる国がほかにあるのか」(立憲民主党の本多平直氏)。政府が守勢に回ったこの日、東京都は都内の感染状況を4段階中、最も深刻な表現に引き上げた。

 事業は政府が1兆6794億円をかけた民間支援事業「Go To キャンペーン」の核となる施策で、経済のV字回復のため官邸主導で打ち出した。安倍晋三首相は4月7日の記者会見で、このキャンペーンを含む経済対策を「世界的にも最大級」と胸を張った。

 だが「緊急事態宣言を世論に納得させるための急ごしらえの政策」(政府関係者)はすぐにほころびが露呈する。上限2294億円に設定した事務経費が巨額だと批判が続出。当初8月としていた「トラベル」の開始時期も旅行業界の声を受けて前倒しになり、赤羽一嘉国土交通相は今月10日、4連休前日のスタートを表明した。

 官邸筋によると、22日スタートは政府内で十分に擦り合わせができないまま、赤羽氏が見切り発車したという。「早過ぎて驚いた。感染者がどのくらい増えたら中断といった基準を全く決めていないのに」。国交省幹部が準備不足を認めるほどだ。

 懸念は的中。首都圏や大阪を中心に感染者数は急増した。全国知事会は国への緊急提言で「『Go To』が感染拡大要因になることだけは避けなければならない」とくぎを刺した。日本医師会の中川俊男会長も「前倒しは好ましくない」と記者会見で訴えた。

 政府関係者によると、軌道修正の必要性が急浮上したのは14日になってから。コロナ対策で名を上げた大阪府の吉村洋文知事が官邸で首相と面会。その後に「今、いきなり全国に広げてやるべきではない」と記者団に強調した。「国民的人気の高い吉村氏の発言は無視できないとの声が官邸内に広がった」(政府関係者)という。

 もっとも、直前に方針転換すれば感染リスクを国民に強く印象付けかねず、ようやく息を吹き返そうとしている景気に強烈な冷や水となりかねない。「進むも地獄、戻るも地獄だ」。観光庁関係者はこう指摘する。 (東京支社取材班)

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