ハンカチから便箋の代わりまで…便利な「懐紙」 使い方とマナー

西日本新聞 くらし面

 猫の小町と申します。皆さんがお困りのことをたちまち解決していきます。第3金曜は、さまざまな場面のマナーについて「インフィニ フィニッシング アカデミー」(福岡市)の副校長本多美智子さんにお助けいただきます。

 ポケットティッシュや除菌・汗拭きシートは、手拭きや掃除などに欠かせません。持ち歩いて手軽に使えて、現代の世の中は便利ですね。実は日本では、千年以上前から「懐紙」という和紙を携帯して使っていました。

 和紙を束にして二つに折ったものが懐紙です。料理の下に敷かれているのを見たことはありますか。茶道で菓子の取り皿として使ったり、飲み口を拭ったり、指を清めたりするのがよく知られていますが、茶道具として誕生したわけではありません。

 懐紙は、平安時代中期ごろに使われるようになったといわれています。現在よく使われているサイズは縦17・5センチ、横14・5センチ程度ですが、当時は今よりずっと大きな紙でした。それを折り畳んで着物の胸元に入れることから、懐紙として「かいし」あるいは「ふところがみ」と呼ばれるようになったようです。紙が貴重な時代、これを持ち歩くことが貴族のたしなみとされていたとか。一般に普及したのは江戸時代とされ、浮世絵にも描かれています。

 最大の魅力は、一枚でハンカチやティッシュから便箋の代わりまで、何通りもの使い方ができること。平安貴族たちも、杯の飲み口を拭う、何かを包む、詠んだ和歌をすぐに書き留めるなど、さまざまな使い方をしました。源氏物語や枕草子にも、懐紙に和歌を書く様子が出てきます。

 使われる場面は日常以外にも。敬意や謝意を示す贈り物として、結納やお祝いのお返しの品にすることがあるほか、神聖さを表すものとして宮中儀式に登場します。今も皇族は、装束の懐に昔ながらの大きな懐紙を入れているそうです。

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 ふっくら柔らかな風合いで、丈夫で便利な懐紙を、生活に取り入れてみましょう。いざ手に取るとなると、使い方やマナーが気になりますね。

 まずは選び方。いろんな色や柄が市販されています。神社へのお礼参りなどに使うなら、白い無地の物を選びましょう。日常使いには、男女や用途を問わず、どんな物でも大丈夫です。場面や季節で使い分けるのもいいですね。

 懐紙は二つ折りの束のまま持ち歩き、外側から使います。汚れや擦れ、破れが気になるときには、外側の1枚を破棄して、2枚目を使いましょう。

 衛生面を考えると、懐紙入れに入れるのがベスト。専用の物でなくても構いません。自分の好みに合う色や柄を探してみてください。懐紙入れはバッグと同じなので、食事の席で使うときは机上に置かず、使うたびにしまいましょう。懐紙を菓子などの下に敷いて出す場合は、そのまま二つ折りで使うか、上側を少し右にずらした二つ折りで使います。弔事の場合は左へずらします。

 折り畳んでさまざまな形にできるので、少額の現金を渡す際のポチ袋や箸袋にもなります。持っておけば、ティッシュやハンカチ以上に力を発揮する優れ物です。使った懐紙はその場に残さず持ち帰ります。持ち込んだ物を持ち帰るのは、これに限らずエチケットですね。

 着物や浴衣で出掛けるときに懐に入れておけば、便利なだけでなく、上品な所作や、粋な雰囲気も出ますね。懐でなくても、日常的にバッグに忍ばせておいてはいかがでしょうか。

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