全国大会か受験か…総体中止で別々の道 スランプ越えた2人「また一緒に泳ごう」

 水しぶきを上げ、あっという間に1キロ、2キロと距離を伸ばしていく。6月の最終金曜日。福岡市博多区の福岡県立総合プールに2人がそろう「最後」の練習は、いつも通りに終わった。

 幼い頃に水泳を始めた武蔵台高3年の藤井菜緒さん(17)と、筑紫丘高3年の古屋あきさん。一時はスランプに陥り、プールから遠ざかった同じ経験を持つ。でもやっぱり水泳が好きで、スイミングクラブ「寺子屋水泳部」で再出発した。

 高校最後の大会に向けて頑張っていたが、新型コロナウイルスの影響で中止に。次の大会を目指すか、受験勉強に専念するか。2人が選んだ道とは-。

   ◆    ◆

 「練習自粛でプールに入れず、『泳ぎたい』と家で叫んで怒られた」と笑うのは藤井さん。初の全国高校総体出場へ追い込みをかけていたが、国の緊急事態宣言により、練習は4月から中止された。九州大会への出場を目指す古屋さんと励まし合いながら、筋トレなどに励んできた。

 しかしその後、どちらの大会も中止に。藤井さんは「高校最後の高校生の全国大会だからこそ特別なのに」と肩を落とした。大会を区切りに、本格的に大学受験の勉強に励もうと決めていた古屋さんも「大会がなくなったら、いつ水泳を辞めればいいんだろう」。「最後の舞台」を失った2人は戸惑った。

練習に励む古屋晶帆さん(寺子屋水泳部提供)

 2人が寺子屋水泳部に入ったのは、高校生になってからのことだ。以前に所属していたスイミングクラブでは、思うようなタイムを出せない自分を追い込み、競技を離れてしまった。

 「もう一回水泳を好きになって高校生活を終わりたい」(古屋さん)。寺子屋水泳部の「楽しむ心を取り戻す」コンセプトに共感して、2人は門をたたいた。松尾欣久代表は欠点を指摘するより長所を伸ばす。「今の泳ぎ、呼吸はしっかり意識できていたよ」。前向きな言葉に、水泳が好きだったころの気持ちを思い出した。

 「一度つらい経験をしたから、ハードな練習も楽しいことが多い。藤井さんはその気持ちを一番分かり合える存在」と古屋さん。2人は次第に、タイムや入賞も意識するようになった。

来春の全国大会出場を目指す藤井菜緒さん(寺子屋水泳部提供)

 「最後の舞台」に立たないままでは終われない。

 藤井さんは今、来春の全国大会に照準を定めている。週4回の練習のほか、休日も自主練習に励む。専門学校へ進学する予定で、勉強との両立に不安がないわけではない。それでも「大会が中止になったからこそ、『絶対に出場してやる』という気持ちになった」。

 一方の古屋さんも、水泳を続けたい思いがわいてきた。そのためにも、早めに受験勉強に専念することにした。その決断を、藤井さんに一番に伝えた。

 「藤井さんが全国大会で泳ぐ姿を見たい」とエールを送る古屋さん。「受験が終わったら、また一緒に泳ぎたい」と笑顔を返す藤井さん。選ぶ道は違っても、それぞれの「最後の夏」を2人は心に刻む。(黒田加那)

福岡県の天気予報

PR

PR