なぜ?土石流から1年、工事手つかず 「また崩れるのでは」住民不安

西日本新聞 佐賀版 穴井 友梨

現場からの報告 2019佐賀大雨(上)

 昨年の大雨で大規模な土石流災害が発生した佐賀市金立町大門地区。復旧は完了せず、市道や川岸が崩壊したままの状態になっている。県によると上流部での砂防ダム建設に時間がかかっているのが理由。九州を豪雨が襲う中、住民からは「また崩れるのでは」と心配の声が上がっている。

 「今回は何とかなったが…。また1カ所でも崩れれば次はどうなるか分からん」。豪雨が小康状態になった今月8日、同地区に住む自営業男性(65)は表情を曇らせた。

 昨夏の雨では土砂や流木で流れがせき止められた金立川が氾濫。川沿いの市道が100メートル以上にわたり崩れ、土砂が流れ込むなどして民家3軒が全壊した。

 市道は復旧した部分もあるが、上流部では崩れた川岸や流出した土砂など昨年の爪痕が現在も残っている。男性は「見るのがつらく、すぐにでも直してほしい。少しの雨でも住民は不安でいっぱい」と訴えた。

 県佐賀土木事務所河川課によると、土砂や流木を食い止める砂防ダムを上流に建設予定のため、下流の工事に着手できていない状態という。「ダム下流には一緒に水路も造る。先に水路を造れば山の中にある土砂などが流れ出しやすくなるため、下流の安全確保にはまずダムの整備が必要だ」と説明した。

 砂防ダムは一般的に、小規模でも完成まで4~5年かかり、用地買収や砂防指定区域の許認可など前段の事務作業にも時間が必要になる。現在は地質調査や地形の測量を終え構造や位置、形状を設計する段階で、同事務所は「一日も早い復旧に向け、年内には工事に着手したい」とする。

 住民の不安の声もあり、県は地区内に雨量計やサイレン、赤色灯を設置。土石流の流れを感知して住民や関係機関にメールを送るセンサーも置き、早期の避難を呼び掛ける。「ダムのような防災施設でも防ぎきれない災害は起こりうる。建設には時間がかかると認識し、危険があれば避難してほしい」としている。

 ただ、「放っておかれているのでは」と思う住民がいるのも事実。全壊した3軒の民家近くに住む広瀬政勝さん(68)は「災害時には避難してというのは分かるが、1年近く何も変わっておらず、手つかずに見える」と首をかしげる。そして「いつまでに復旧するという説明や声掛けがあれば少しは安心できるのに、それもない」とも。

 生まれた時から地区に住み、近隣住民は「竹馬の友」。生まれ育った土地に安心して住み続けたいと、一日も早い復旧を待ち望む。「武雄や大町はもっと対応が早かったのでは。住民が少なくても平等に扱って、とにかく早く工事してほしい」と、崩れた川岸を見つめた。 (穴井友梨)

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 佐賀県内の広範囲に大きな浸水被害をもたらした昨年8月の記録的大雨。来月で発災から1年となるのを前に、被災地の現状や取り組まれている対策を追った。

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