手帳には1枚のカードが挟んであった…

西日本新聞 オピニオン面

 手帳には1枚のカードが挟んであった。何度も読み返し、自問を重ねたのだろう。表面は擦り切れていた。財務省近畿財務局職員だった赤木俊夫さんが、自死に追い詰められた苦悩の境遇を物語る

▼国民全体の奉仕者として公正に働いているか、自己点検項目が記された国家公務員倫理カード。赤木さんはこれを常に携帯していた。妻の雅子さんが先週、国家賠償請求訴訟の初弁論で原告として意見陳述した後、報道陣に公開した

▼「夫は決裁文書の改ざんに抵抗したのに強制されて…」「強い自責の念に襲われ、国民の皆さんに死んでおわびすることにしたのだと思います」

▼森友学園を巡る公文書改ざん問題。雅子さんは大阪地裁の法廷で涙ながらに陳述し、何よりも真相を解明してほしいと訴えた。訴訟の相手方は国と佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官だ。多くの国民も同じ気持ちだろう

▼改ざんが何のためにどんな経緯で行われたのか。財務省の調査報告書は疑問点が多く、赤木さんに関する記述はない。共同通信の直近の世論調査で、政府による再調査を求める人は8割余に達した

▼「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができることに誇りを持っています」。赤木さんは生前、こう語っていた。裁かれるべきは誰か。佐川氏をはじめ問題の関係者は今後の法廷で真実を述べてほしい。誠実な公職者の理不尽な死が闇のベールに覆い隠されてしまわぬように。

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