「黙っていられない」コロナ禍の雇用、支える労組 加入者増

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 新型コロナウイルス感染症の流行による解雇や不十分な休業手当を巡り、新たに労働組合をつくったり、既存の組合に入ったりして働き手の権利を守る動きが出ている。全国労働組合総連合(全労連)の加盟組織にはこの間、約300人が新たに加入し、九州では福岡県で自動車交通関連の労組に五つの分会ができた。コロナ禍の中、働く人が一方的に不利な労働条件を突き付けられる例は多く、問題解決の手段として労組が見直されているようだ。

 福岡市のタクシー会社に勤める男性(57)は、4月分の給料が手取りで約1万4千円だった。コロナで客は減り、収入は激減した。

 社員の多くが手取り2万~3万円に。最低賃金の水準を下回る同僚もいた。「黙っていられない」と組合をつくることにした。

 全労連系の全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)の福岡地連には、職場に労組のないタクシー運転手などが個人加入できる自交総連福岡自動車交通労働組合(福自交労組)がある。これに同僚と入り、会社に分会を設けた。分会の組合員はその後、8人に増えた。

 そのうちの一人の男性(60)はコロナ禍の中で解雇を告げられ、分会に入った。組合が団体交渉で解雇無効を訴え、使用者側は撤回した。男性は「解雇と言われて途方に暮れていた。団交後は目が潤みました」。組合は休業手当の充実や最低賃金分の保障も求め、前向きな回答を得たという。

 福岡地連によると、別の4社にも福自交労組などの分会が新たに結成された。内田大亮(だいすけ)書記長は「問題解決に労組は有効。働く人が声を上げれば、改善できるという伸びしろを感じる」と強調する。

 全労連によると、感染が広がった3月から6月上旬にかけて、全国で新たに加入した組合員は約300人に上る。労組は団体交渉のほかストライキといった争議行為をできるなど強い権利があり、苦境に陥った人が労組に相談し、こうした権利を知って入っているとみられる。

 全労連の地方組織では、沖縄県で雇用形態にかかわらず1人でも入れるユニオンに、観光バスの運転手など40人近くが加わり、三つの職場に支部ができた。宮城県や京都府でも同様の例が出ている。全労連の担当者は「例年にない加入状況」。会社の枠を超え、個人でも入れるユニオンに加わる例が多いという。

 連合系では、UAゼンセンに3~5月、労組結成に関する10件以上の相談があった。「『会社に休業の補償を要求するのに組合が必要と分かった。組合のつくり方を教えて』という声が多い」(担当者)という。交通労連でも、関連する複数の事業所で労組設立の動きがある。 (編集委員・河野賢治)

会社は労働法の知識を

 大内伸哉・神戸大教授(労働法)の話 日本の労組運動は近年、ユニオンに非正社員や中小企業の従業員が駆け込み、団体交渉する形が増えている。コロナ禍の組合加入も、この傾向が底流にありそうだ。企業別労組は協調的な労使協議を軸にするが、ユニオンは戦う姿勢を示す傾向があるのも要因かもしれない。コロナで労働条件を引き下げざるを得ない会社もあるが、労組への加入は労働者の権利であり、会社は労組と向き合う時に備え、日頃から労働関連法を学んでおく必要がある。

【ワードBOX】労働組合の現状

 国の集計では労働組合員数は約1009万人(2019年)で、ここ数年は微増だが、ピーク時の約1270万人(1994年)からは減っている。労組の組織率は16.7%(2019年)で、戦後の50%台から下落傾向。企業規模別は従業員1000人以上が40.8%、100~999人が同11.4%、99人以下が同0.8%と、大企業につくられる企業別労組が中心になっている。一方、正社員やパートといった雇用形態や会社の枠を超えて個人加入できるユニオンもあり、組合のない中小企業の社員などの受け皿になっている。

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