検察と政治 独立性保つための議論を

西日本新聞 オピニオン面

 「刷新」という名にふさわしい会議でなければならない。問題の本質から目をそらすような議論で終わるのなら、国民の検察不信は増幅するだけだ。

 東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年延長や賭けマージャン問題を受け、森雅子法相が立ち上げた「法務・検察行政刷新会議」の初会合が先週、法務省であった。鎌田薫・前早稲田大総長を座長とする12人の法律家や有識者で構成され、半年をめどに結論をまとめるという。

 ところが、出だしから会議の在り方に疑問の声が上がっている。「政治と検察の距離」についてどう議論するのか、という肝心な点が会議のテーマとして明示されていないからだ。

 初会合で申し合わされたテーマは「検察官の倫理」「法務行政の透明化」「日本の刑事手続きが国際的な理解を得られるための方策」の三つだ。

 「倫理」は当然だろう。捜査の状況や結果を国民に丁寧に説明する「透明化」や、海外から人質司法と批判される制度・運用の見直しも確かに求められている。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件では長期の身柄拘束が疑問視された。

 しかし、今回最も深刻な問題は、検察が政治と一線を画す独立性に疑念が生じたことだ。首相官邸に近いと目される人物を次期検事総長に据えることを想定したような脱法的な定年延長がまかり通ったり、それを既成事実化するような検察庁法改正案が国会に提出されたりしたことは、決して看過できない。

 法務省内は、これらを刷新会議でどう取り上げるか調整がつかず、メンバーの人選が難航したと報じられている。問題は安倍晋三政権の独善的かつ強引な姿勢に起因し、法務省側は受け身の立場だった面はある。

 一方で、司法の一翼を担う組織が、政治による露骨な人事介入や検察庁法に定めがない定年延長を容認したとされる体質も見逃すわけにはいかない。

 森法相はこの点について詳しい言及を避けつつ刷新会議の初会合で「テーマに拘泥せず、聖域なく議論を進めてもらいたい」と語っている。であれば、一連の経緯を会議で詳しく検証し、検察の独立性を保つには何が必要か、積極的に議論するよう自ら提起すべきではないか。

 折しも初会合の翌日には、黒川氏の後任の林真琴東京高検検事長が検事総長に就任した。記者会見では厳正公平、不偏不党の立場を強調し「政治とは一定の距離が必要」と語った。

 その言葉に偽りはないか。永田町や霞が関が舞台の犯罪でも毅然(きぜん)と摘発していけるか。検察自身も国民の信頼回復に向けた姿勢を打ち出してほしい。

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