九州は温暖化最前線、もはや2階では命守れず 新たな避難「文化」を

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え⑲

 「九州は東シナ海に面しているので、残念ながら今後もっと豪雨が増える」。東大の気象学者、中村尚教授に、そう伺いました。

 「東シナ海は全球平均より速いペースで温暖化しており、暖候期における集中豪雨のリスク増大、つまり雨量や発生頻度の増加、発生時期の拡大などが予想される」そうです。九州は温暖化の最前線にいます。「夜間は昼間より雲が下がるので降水量が増える」ともおっしゃっていました。

 今回の豪雨の雨量が予測を大きく超えたことについて、気象庁長官は「記憶にないほど梅雨前線が長期停滞した」ことも原因に上げています。であれば、過去の降水量に基づき整備した河川堤防やダムなどのインフラで治水に立ち向かう考え方では、もはや間に合わないことを意味します。

 球磨川流域では、個人の住宅の備えも進んでいました。建築学会の報告では流域では流水の水圧を逃すように、1階はピロティ式で2階から上が住まいという家が多くありました。3階建ても多く、川の反対側に階段を外付けし、屋根の上で浸水から身を守るよう設計されているのにも驚きました。さらに、流された人の救助用に洗濯ざおを屋上に備えているのです。それでも3階建てに住んでいた男性は「浸水のスピードが速くて屋根の上でなんとか命を守った」とのこと。

 テレビ中継で耳にする「2階以上の部屋に逃げて」というアナウンスを、災害研究者として不適切に感じていました。もう2階では助からないほどの豪雨が頻発しています。何かで防ぐ、危機がギリギリに迫ってから避難―それでは対処が難しい現実を改めて突き付けられています。逃げずに済む安全な土地は狭い日本には少ないからです。

 いつどこで線状降水帯が発生するか、今の予測技術では的中確率は約10%。精度は低く、いつ消えるかなどの予測はさらに難題です。今回、7月4日正午までの24時間に九州では13の線状降水帯が確認されたそうで、2018年西日本豪雨の総数に匹敵する集中発生でした。地方の気象台が大雨特別警報の発令前に東京の本庁に確認する手続きがありますが、短時間で激しく降る昨今の豪雨では命を守る時間のロスです。

 明るいうちの早めの避難を、空振りでも無駄足と思わず、お金のかからない一番安全で賢明な手段だと受け止める文化を、醸成することが課題です。

 早期の避難行動を住民が面倒に思わず、レジャー化できるような設備が避難先の施設にあれば、考え方が変わっていくのではないかと期待しています。とはいえ、現在のコロナ禍では避難所にそういった考えを持ち込むこともままならず、歯がゆい思いです。(九大准教授)

 ◆備えのポイント 避難のきっかけにする事象や基準を、ご家族や近所で持ち寄りシェアしましょう。例えば雨垂れの音がこれまでより大きい、近所の排水ポンプ場などが冠水しそうなど。地面に亀裂が生じたといった土砂災害の七つの前兆なども検討してください。球磨川流域では日頃から2階に荷物を置き、1階では最低限の生活物資で暮らしていたそうです。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

 

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