「奇跡が起きた」豪雨でホテルの看板流失…100キロ先で見つけた人は

西日本新聞 社会面 笠原 和香子

「どげんかして届けよう」

 記録的豪雨で流された大分県日田市天ケ瀬温泉街のホテル成天閣の看板が、約100キロ離れた有明海沿岸で見つかり、2週間ぶりにホテルに戻った。発見したのは四半世紀前に宿泊した佐賀県の男性。不思議な縁に「運命を感じた」という古賀信寿社長は「ホテルにも大量の土砂が流れ込んだが、必ず復興してまたみんなをもてなしたい」と心を新たにしている。

 成天閣は、筑後川支流の玖珠川沿いにある1942年創業の老舗ホテル。約60年前に自前で架けた対岸とホテル玄関前を結ぶ朱色のつり橋が、温泉街のシンボルとなっていた。看板も20年ほど前、古賀社長らが日田杉の一枚板を使って手作りし、ホテル玄関で多くの宿泊客を出迎えてきた。

 豪雨に襲われた7、8の両日、いつもは穏やかな玖珠川が氾濫し、ホテルは1、2階が被災した。七つの風呂は全て浸水し、つり橋も壊れ、看板も7日に流失した。

 玖珠川や筑後川を経て下流に流れたとみられる看板が見つかったのは19日。佐賀県白石町の有明海沿岸で、漂着物清掃をしていた同町のノリ養殖業片渕保幸さん(57)が発見した。大量の流木やごみの中に「天ケ瀬観光ホテル」という白い字が見えた。

 妻美紀子さん(57)に伝えると、25年ほど前の記憶がよみがえった。2人で成天閣に泊まり、つり橋を何度も渡った楽しい思い出に浸った。「ホテルにとって大事なもの。どげんかして届けよう」と思い立ち、夫妻は21日、看板を車に積んでホテルを訪れた。

看板は塗料がはげ、端々が傷んでいた

 約100キロも流された看板は塗料ははげ、端々が破損していた。傷んだ看板をいとおしそうに何度もなでる古賀社長。片渕さんは「天ケ瀬温泉街に運命を感じました。活気が戻った時にまた来ます」と激励した。

 ホテルには被災直後から多い日で知人約60人が片付けの手伝いに来てくれた。以前宿泊した人からの応援メッセージも相次いで届いている。

 つり橋は多額の復旧費がかかる見込み。ホテル再開の見通しも立たないが、古賀社長はこう誓った。「人のつながりがあったからこそ今回の奇跡が起きた。こんなに応援してくれる人たちがいるから頑張らんと」

(笠原和香子)

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