オンライン演劇に活路 演出家・俳優の有門さん、地元仲間で公演模索

西日本新聞 北九州版 竹次 稔

再起withコロナ

 北九州市を拠点に活動する演出家・俳優の有門正太郎さん(45)にとって、携わった愛知県春日井市の演劇プロジェクトが2月末、新型コロナウイルスの感染拡大で急きょ、延期になったことが一番きつかった。

 市民参加型の演劇「春よ恋」を演出した。同市には全国から自分史を集めた珍しい施設がある。それを題材に、若者から高齢者まで幅広く加わった作品。2017年からかかわるプロジェクトの集大成だった。

 その後、福岡市にあるタレント養成所の演技指導や商業施設での大道芸人の仕事も消えた。「演劇関係者は3月以降、携帯電話の着信音が鳴るのが怖かったと思う。また仕事のキャンセルかと」。先の光が見えないトンネルに入り込んだ。

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 目標を失いかけ、心がすさんだ。それを埋め合わせるように、門司区で暮らす父や休校中の息子を連れ立って豊前市にある空き家の草刈りに行ったり、自宅を片付けたりした。息子の勉強もみた。

 北九州市で再び感染が拡大した5月末。会員制交流サイト(SNS)で、オンライン演劇「未開の議場」の出演者募集の投稿を目にした。

 倉本聰氏主宰の北海道の「富良野塾」などを経て、北九州で劇団を率いる身だ。生の舞台が一番と考えていたが、オンラインであっても一歩踏み出そうと手を上げた。

 九州・沖縄から13人が出演者に選ばれた。テレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使い、6月末の公演まで1日2、3時間のオンライン練習を10回ほど繰り返し、一部グループで自発的に自主練も発生していた。

 「未開の議場」は、商工会青年部理事会のオンライン会議が舞台。お祭りへの外国人の参加を巡り、賛否の意見を戦わせながら参加に道筋を付けるストーリーで、入れ代わり立ち代わりテンポよく人間模様も描かれている。

 「オンラインが良いと認めたくない気持ちもあるけど、満足できる作品になった」。メンバーの打ち上げもズーム飲み会だった。

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 「みんなに会いたいんよ」。北九州演劇人井戸端会議と称した集まりが24、26の両日、市内で開かれる。予想を超える約60人が参加予定で、呼び掛けた有門さんも驚いている。

 個別の劇団が公演しようとしても、過密を避けながら収入を確保できるか分からない。それならまず、合同公演を企画し、無観客のネット配信でもできないか意見を交わすつもりだ。ばらばらになりかけた仲間と、思いを共有したい。

 「オンラインだけど、自分は結局、演劇に助けられて創作意欲がめきめき戻ってきた。感染防止との両立は手探りだが、少しずつ、前に進んでいくしかない」

(竹次稔)

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、社会経済活動が大きく停滞した。共存するしかない「ウィズコロナ」の時代。再起を模索する北九州・京築地区の人たちを紹介する。

=随時掲載

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