古里復興へ最前線で走る 球磨村の公務員ランナー、祖父の死乗り越え

西日本新聞 社会面 中野 剛史

 熊本県南部を襲った豪雨で甚大な被害が出た球磨村に、村の誇りを背負って走る公務員ランナーがいる。地下(じげ)翔太さん(32)。箱根駅伝でアンカーを務め、マラソンでも好成績を収めてきた。今回の豪雨で祖父を亡くした悲しみを振り払い、古里の復旧復興の最前線で汗を流す。

【動画】球磨川の氾濫で大きな被害を受けた熊本県球磨村

 「いろいろありすぎて…。あっという間でした」。一言一言をかみしめるように振り返る。

 村で育ち、多良木高から上武大へ。4年の時に一度だけ出場した箱根駅伝の復路アンカーを務めた。その後、村職員として働きながら、2012年から始まった熊本城マラソンの初代王者に輝くなどの結果を残し、現在は子どもたちの指導もしている。

 今回の豪雨で特別養護老人ホーム「千寿園」に入っていた祖父の末行さん(91)を失った。「地元の寺の鐘突き堂や、村の皆さんの家を造った大工でした。中学時代、僕の塾の送迎もしてくれました」。在りし日を思い出す。

 だが悲しみに沈む時間はなかった。役場職員として災害対応の最前線に立った。水害で取り残され、ヘリで運ばれてきた住民を抱きかかえて避難所へ導いた。村外に設けられた避難所の担当になってからは、医療団などとの調整に奔走した。

 目まぐるしい日々の中、フェイスブックにメッセージが届いた。「頑張っている姿を誇りに思う」。大学時代の駅伝の恩師で、現在は実業団で指導する花田勝彦さん(49)からだった。「ぐっと力が湧いてきました」

 自分が何をなすべきか。考える時間が欲しくて少しずつ走り始めている。走る姿で村民を勇気づけたいが、新型コロナウイルスの影響で大会は軒並み中止という現実もある。それでも「箱根で走ることを目指し、大学での猛練習に耐え抜いたことが僕の支え。村のためにも、あの頃のがむしゃらな気持ちで頑張り続けたい」。言葉に力を込めた。 (中野剛史)

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