相次ぐシッターの性犯罪「前科チェックする仕組みを」被害家族ら訴え

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

 ベビーシッターのマッチング業者大手「キッズライン」(東京)に登録するシッターが、保育中の子どもにわいせつな行為をしたとして相次いで逮捕された。事前に見抜くことが難しい中、子どもたちをどう守るか。被害者の家族らは、性犯罪歴のある人が保育・教育現場で働けないよう、前科の有無をチェックできる仕組みの創設を訴えている。

 「娘の心の傷はいかばかりかと不安な気持ちはかなりある。事件は氷山の一角。一人の犯罪者のために多くの子どもたちの未来がつぶされてはならない」。5歳の娘が被害に遭ったという女性は14日、都内で記者会見し訴えた。

 新型コロナウイルスの感染拡大で保育所が休園となり、顔なじみのシッターの予約が取れず、キッズラインを通じて、あるシッターの男に4月下旬から依頼した。被害に気付いたのは、8回目の保育終了後に同社からかかってきた「(同じシッターでは)今後サポートできなくなった」という電話がきっかけだった。わけは個人情報を理由に教えてもらえなかった。

 娘に伝えると「よかったー」と明るい表情になった。「まさか」と胸騒ぎがして詳しく話を聞くと、公園のトイレや女性が仕事をしていた隣の部屋で被害を繰り返し受けていたことが判明。「痛い、やめてと言ってもやめてくれなかった」と娘は話したという。

 「これまで子ども思いの保育士さんが多く、性犯罪者が紛れている可能性に考えが及ばなかった。子どもの性被害に親はこんなにも気付けないんだと痛感した」。警察に通報し、男は6月に逮捕された。

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 キッズラインは、従来のシッター派遣業者と異なり、フリーのシッターと利用者をインターネット上で仲介し、利用者がシッターと直接契約する仕組み。スマートフォンなどで24時間予約でき、比較的低価格で利用できることから人気を集めている。内閣府のシッター利用料割引制度や、福岡市の産後ヘルパー派遣事業の対象になっており、全国でシッター約4500人が登録しているという。

 シッターは保育士や看護師の資格があるか、研修を受講するなどの要件を満たせば、個人で自治体へ届け出て始められる。厚生労働省は、2014年にシッターの男が預かり中の男児を殺害する事件が起きたのを機に、マッチング業者向けのガイドラインを策定。ただ、シッター登録時に身分証の提出を求めるといった内容で、守らなくても罰則はなく、安全性は事業者次第となっている。

 キッズラインでは、4月に別のシッターの男も強制わいせつの疑いで逮捕されている。同社は取材に「2人とも保育士免許を持ち、保育園での勤務経験など実績もあってクレームはなかった。登録審査で犯罪行為を行う可能性を見抜くのは難しい」とコメント。事件後は全ての男性シッターの利用を一時停止しており、対応には「性差別だ」と疑問の声も上がっている。

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 「会社の問題と矮小(わいしょう)化せずに社会的な仕組みにつなげて、犠牲者を防ぐ必要がある」。会見では、都内を中心に保育事業を手がけるNPO法人フローレンス(東京)の駒崎弘樹代表理事も訴えた。

 英国では、子どもと関わる仕事を始めたい人は、「DBS」と呼ばれる公的機関が発行する「無犯罪証明書」を事業者に提出しなければならない。日本では、罪を犯して免許が失効しても、教員は3年、保育士は2年で再取得でき、現場に戻ることも可能だ。

 駒崎さんは、法務省の調査で小児わいせつの再犯率が80%を超えていると指摘し「行政の仕組みなしに事業者は性犯罪者を判別することができない」として、日本版DBSの創設を求める。日本では里親希望者については、児童相談所が犯歴照会を行っているが、保育・教育現場における導入の議論は進んでいない。

 「無犯罪証明書を求める現場ベビーシッターの会」代表の参納初夏さんは、メンバーの「男性保育士というだけで性犯罪者のように扱われるのは残念に思う」という声を紹介。「保育・教育現場で働く人たちの信用を守るためにも制度が必要」と、6月からオンラインで署名を集めている。

 保育政策に詳しい日本総合研究所の池本美香・上席主任研究員は「子どもの性被害があまりに軽視されている。まずは実態を把握し、子どもと接するのに不適切な人を排除する仕組みが必要だ」と話している。 (新西ましほ)

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