「寂しかったね」病床の妻と4カ月ぶり面会、わずか5分 夫のやるせなさ

西日本新聞 佐賀版 梅本 邦明

 病床の妻にずっと会えるだろうか-。九州でも新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、入院中の妻との面会を心配する男性がいる。佐賀県大町町の山口久人さん(66)。昨年8月の記録的大雨で被災後、体調を崩しがちになった。生活の先行きが見通せない中、40年連れ添った妻(65)を見舞うのは心のよりどころだった。ところがコロナ禍で面会は制限。やるせなさを抱えながら、限られた時間で感謝の気持ちを伝えている。

 7月上旬、町内の順天堂病院。「寂しかったね。元気しよったね」。山口さんは難病で寝たきりの妻を約4カ月ぶりに見舞った。

 感染防止のため防護服とマスクを着用し、ベッドから距離を取って話しかけた。わずか5分。妻はしゃべることはできないが、目はどこか笑ったようだった。

 昨年5月、多久市から病院がある同町に移った。病院まで約10分歩いて見舞うのが日課に。「会っても何もしてあげられないが、やっぱり心配だった」

 約3カ月後の大雨で自宅アパートは水に漬かった。避難所生活や町営住宅への転居を余儀なくされ、昨年12月から町内のみなし仮設のアパートで暮らしている。

 生活環境の変化やストレスで血圧は上昇し、不眠に悩まされた。病院までは徒歩で30分以上の距離になったが妻の見舞いは欠かさず、車で通った。

 面会は互いにとって精神的な支えだった。だがコロナの感染防止のため今春から禁止になり、代わりにタブレット端末の画面越しに妻に話しかけた。返事はなく、表情も分からない。着替えを看護師に手渡す際、妻宛てのメモも託すようになった。「元気かい」「孫が生まれたよ」。ただ、心配させまいと自身の変調は明かさなかった。

 今月からは短時間ながら、再び面会ができるようになった。伴侶に会えず1人で過ごしていた間、改めて気付かされた。「仕事から帰宅すればご飯がある。寝るときはそばに妻がいる。当たり前の日常のありがたさがしみじみと分かった」

 昨年10月、結婚40年を迎え「妻には感謝しかない」と山口さん。ようやく会えるようになったのに、コロナは再流行のムードが漂う。「再び面会できなくなるのかが不安。これ以上、コロナが広がらないでほしい」。妻の写真アルバムを見つめ、絞り出すように話した。 (梅本邦明)

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