自粛は生命活動の縮小 哲学者 内山節氏

西日本新聞 総合面 前田 絵

コロナと経済社会 変革への視座

 -新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。

 「新型コロナウイルスについて言えるのは『何も分からない』ということだ。手探りで対処するしかない。阪神大震災や東日本大震災の経験から、危機対応は地方自治体が決定権を持つべきだと分かった。東京都と宮崎県椎葉村の事情は異なる。国は自治体にお金を渡し、諸外国の研究論文を含めあらゆるデータを絶えず公開し、現場が判断できるようにする必要がある」

 -人との身体的接触を控えるよう求められる中で人間関係をどう築くか。

 「マスクの着用や手洗いの徹底、人との距離を2メートル空けるといった対策を取りながら、外に出た方が良い。感染を怖がって家に閉じこもることで、むしろ体を悪くした人もいる。オンラインのつながりで一時的にしのいでもいいが、やはり顔を合わせることで得られるものは非常に大きく、無視してはいけない。緊急事態宣言の解除後、再開した飲食店を見ていると、特定の人と緩やかなつながりを持っていた店ほど回復が早いように感じた」

 -テレワークも増えている。

 「オンラインで仕事をすると、問題提起や企画立案ができる人とできない人がはっきりし、職場で潤滑油的な役割を果たしている人が評価されなくなる。従業員の能力を見極めるという点では、経営者側に短期的なメリットがある。しかし、無駄に見えることから新しいものが生まれたり、雑談から何かをひらめいたりすることがある。そういう機会をテレワークで完全に奪うことは、中長期的にはデメリットになるだろう」

 -地方移住への関心が高まっている。

 「地方移住の動きにより弾みがつくということはあるだろう。農村部への移住は1970年代に一つの流れとして始まった。最終的に農山村の人口の半分はIターンになるんじゃないかと思っている」

 -未知のウイルスと共存する社会とは。

 「分からないものと付き合う時は、どこを恐れて、どこを許容するかを考えないといけない。人間は家族や仕事、自然などあらゆるものとの関係の中で生きている。自粛とは生命活動を縮小することであり、関係を断ち切れば、生きる世界を失ってしまう」

 「コロナによって、ある関係が細くなったのであれば、その分だけ別の関係を太くすべきだ。例えば宴会ができないのであれば、自然との触れ合いを増やすとかも考えられる。どういうやり方があるのか、知恵を絞る必要がある」

 (聞き手は前田絵、写真は一瀬圭司)

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 ◆内山節(うちやま・たかし) 哲学者。1950年、東京都生まれ。70年代から東京都と群馬県上野村に生活拠点を置き、双方を行き来しながら暮らす。立教大大学院21世紀社会デザイン研究科教授などを務め、現在はNPO法人「森づくりフォーラム」代表理事。

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