特性を知り地区防災計画を 金思穎氏

◆常識通じぬ水害

 2017年九州北部豪雨、18年西日本豪雨、19年台風19号、本年の九州豪雨と、近年気候変動に伴う大水害が続き、多くの犠牲者が出た。被災者からは「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫だと思っていた」「避難なんて、簡単なことだと甘く見ていた」というような声が聞かれる。

 川や山に近いとか、都市部や山村集落であるといった地域の特性によって、想定災害や避難方法は違ってくる。また近年の気候変動で従来の災害経験、つまりその地域の常識では対応できない想定外も増えている。避難所でのコロナ対策のような新しい問題にも対応しなければならない。

 筆者は、災害対策基本法に基づき14年に施行された地区防災計画づくりについて研究してきた。町内会等を中心とした従来の自主防災組織の防災計画は、行政主導でトップダウン型の全国一律の防災活動を前提としていたが、東日本大震災の教訓を踏まえて創設された地区防災計画は、コミュニティーの住民が共助の観点から自発的に作成するボトムアップ型の計画である。地域特性に応じた継続性を持った防災活動が重視され、既に4千以上の地区の住民が計画づくりに取り組んでいる。

 地区防災計画は、近年の水害でも大きな役割を果たした。例えば、18年の西日本豪雨で河川氾濫の被害を受けた愛媛県大洲市三善地区では計画に従って、住民が声をかけあって早期に避難し、逃げ遅れた住民も地区で準備していたボートで救出した。避難所の公民館は浸水したが、浸水前に住民の判断で高台の変電所に避難した。想定外の事態にも柔軟な対応ができ、住民全員の命が救われたのだ。

 ところで、祭りと防災の関係をご存じだろうか。祭りには先人の知恵によって、防災機能が埋め込まれていることがある。例えば福岡市の博多祇園山笠は毎年7月1~15日に開催されるが、これは豪雨の時期に備えるためだと言われる。山笠を舁(か)く男衆や博多の女性(ごりょんさん)たちが祭りに向けてコミュニティー内の連携を強めており、発災時にも対応しやすくなっているからだ。1953年の大水害の際には、山笠の最中に男衆が法被姿で土嚢(どのう)積みを手伝い二次被害を防いだ。常識が通じないような災害が続く中、これまで意識されることが少なかった祭りの防災機能が生きてくるかもしれない。

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 金 思穎(きん・しえい)福岡大非常勤講師 専修大人間科学部研究員。2019年、同大博士(社会学)。地区防災計画学会幹事・青年部長。主著は「防災の法と社会 熊本地震とその後」。

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