「徐々に主権侵害」「無理な関連付け」米中舌戦、ミャンマーでも

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】米国と中国の対立が深刻化する中、在ミャンマーの両国大使館が激しく非難し合っている。米代理公使が18日、南シナ海問題や香港情勢と関連付け「中国はミャンマーの主権も侵害している」との声明をフェイスブックや地元紙で発表すると、中国大使館も直ちに「両国関係の発展に対する米国の負け惜しみ」と反論した。ただ互いに都合の良い点を強調するのに終始。ミャンマー政府は目立った反応を示さず、思わぬ飛び火に困惑する様子がうかがえる。

 米国側はポンペオ国務長官が13日、南シナ海問題で中国が主張する領有権を完全否定。その後、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国にある米大使館が一斉にホームページなどでポンペオ氏の声明を引用して中国批判を展開した。在ミャンマー代理公使の声明もその一環とみられる。

 ただミャンマーは地理的に南シナ海問題と直接関係がない上、国境を接する中国との関係が強い。このため代理公使の声明は、環境を破壊する野放図な鉱山開発▽巨額債務を押し付けるインフラ計画▽女性をはじめとする人身売買▽違法薬物密輸への関与-といったミャンマー国内で中国側の行為とされる疑惑を列挙。「小さな行動の積み重ねによりゆっくり、次第に主権が侵害されている」とし、米国が問題解決を支援すると強調して「中国に立ち向かうASEANを支持する」と訴えた。

 中国大使館は翌19日、フェイスブックなどで声明を発表。米側の主張を「国内問題から注意をそらすための茶番」「自己中心的かつ偽善的、卑劣で醜い」と強く非難。「中国を中傷するため南シナ海や香港の問題とミャンマーを無理に関連付けている」とした。

 また、少数民族ロヒンギャ難民問題を巡り米国がミャンマー政府に圧力をかけていることを「米国こそ内政干渉している」と皮肉った。

 その上で、南シナ海の領有権と香港国家安全維持法の正当性をあらためて強調。習近平国家主席が今年1月にミャンマーを公式訪問したことや新型コロナウイルス対策で医療支援した実績を挙げ「密接な両国関係を非難する米国の試みは失敗する」と断じた。

 ただ、米代理公使が指摘した複数の問題については具体的に反証していない。一方、米側が南シナ海や香港の問題に絡めて異例の声明を出したことにも唐突感を拭えない。

 ミャンマー国内では、今回の舌戦は会員制交流サイト(SNS)で話題になっているが、政府の公式反応はない。地元メディア、イラワジの23日付報道によると、外務省幹部は「私たちが争いをあおったことはない」と中立的な立場を強調した。地元のジャーナリストは「『対立に巻き込まないで』というのが政府の本音だろう」とみる。

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