戦没者慰霊碑780基に「損壊」 遺族ら高齢化で維持管理に限界

西日本新聞 社会面 久 知邦

「郷土の歴史」として継承を

 太平洋戦争などの戦没者をしのぶために建立された慰霊碑や忠霊塔の維持が、管理を担ってきた遺族らの高齢化で難しくなっている。厚生労働省が2018年、民間が建立した碑を対象に行った調査では、全国にある1万6235基のうちひび割れや倒壊の危険があるものが780基あった。戦後75年、記憶の継承だけでなく戦争の歴史を物語る碑も課題に直面している。

 「いつまで忠霊塔を維持できるか」。福岡県の太宰府市遺族連合会の高木計宝(かずとみ)さん(87)は漏らす。同市の戦没者409柱を祭る忠霊塔は長年、会が管理してきた。四半世紀前までは100人ほどが清掃に集まっていたが、今では高齢の遺児ら10人前後にまで減ってしまった。

 刑事だった高木さんの父は強盗殺人事件の捜査をしていた1943年、召集令状が届き戦地へ。45年、フィリピンで「投下爆弾破片創」で戦死した。幼子3人を抱えて困窮した母は戦後、家族で列車に投身自殺しようとしたという。戦没者の無念さだけでなく、残された遺族の苦難も物語る忠霊塔が失われはしまいかと、高木さんは危ぶむ。

 日本遺族会によると、全国の遺族会の会員数は78年に104万世帯あったが、2019年に57万世帯に減少。戦没者の妻の平均年齢は95~96歳、遺児も78歳と高齢化が進む。一方、孫世代への活動の継承がなされず、各地の遺族会が碑の管理の問題に直面している。

 厚労省の調査では、ひびや倒壊の危険がある碑は九州7県に102基、現地を調査しても発見できないなど管理状況「不明」も106基に上った。こうした実態を受け、同省は16年度から碑の埋設や移設にかかる費用の半額を助成する事業を行ってきた。

 福岡県久留米市は17年、この事業を活用し、亀裂が入り倒壊の危険があった、合川小学校敷地内の忠霊塔を撤去した。安置されていた遺骨などは市内の国有地に立つ別の忠霊塔に合祀(ごうし)したという。長年、清掃など管理を続けてきた合川校区遺族会の佐々木秀敏会長(73)は「戦没者が生まれ育った場所で祭っていきたかったが、会員も減る一方で修繕費用もなく、苦渋の決断だった」と明かした。

 戦争に関わる碑を研究する中京大の檜山幸夫名誉教授(日本近代史)は「碑は郷土から誰が戦争に行ったかを刻んだ文化財として捉えるべきだ。自治体が管理し、郷土教育に活用するのが望ましい」と話した。

(久知邦)

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