好きかと問われればそれほどでもないのだが…

西日本新聞 オピニオン面

 好きかと問われればそれほどでもないのだが、この季節になれば一回は食べておかなければ、と思うのが冷やし中華である。店に入り「冷やし中華始めました」の張り紙を確認して注文する

▼バブルの頃はカニカマ、クラゲ、シイタケ甘煮など、のせる具の種類がどんどん増えた。しかしデフレとともに具のリストラも進み、今はキュウリ、錦糸卵、ハムのご三家プラス1種類ぐらいに落ち着いたようだ。料理も時の経済を反映する

▼キュウリの緑、錦糸卵の黄色、ハムのピンクの彩りが鮮やか。酸味のあるかけ汁が夏バテ気味の身に食欲をよみがえらせてくれる

▼昭和初期に日本で考案され全国に広まった料理らしい。だから古い歳時記に「冷やし中華」の項目はない。平成に編まれた歳時記で確認すれば、夏の季語としてちゃんと認知されている

▼中華料理店は毎年何を目安に冷やし中華を始めるのか。店のおばちゃんに聞いた。「特に決めていないけど、暑くなったらね。いつもは7月なんだけど、今年は蒸し暑かったから6月に始めちゃったよ」

▼温暖化が進行すれば、始める時期がどんどん繰り上がり、しまいには「始めました」の張り紙もなくなるのか。店を出たところで、シャツの胸にかけ汁が飛んでいるのに気が付いた。またやった、と思うのも年中行事。汗を拭いながら思う。こんなささやかな季節感であろうとも、温暖化などで失いたくない。

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